ITmedia NEWS >

“テレビでネット”は必要かコラム(2/3 ページ)

» 2006年10月18日 07時58分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

「ネット」は「インターネット」ではない

 この問題を考える前に、筆者は「ネット」という言葉の意味を再確認しておく必要があるように思える。

 近い将来、アクトビラのようなサービスが開始された際には、おそらく「テレビでネットが使えます」「ネットがテレビの可能性を広げます」といったキャッチコピーが踊ることになるだろう。

 ただ、これを聞いたユーザーの一体何割が、その「ネット」が普段パソコンで利用しているインターネットと“同一ではないではない”可能性に気が付くだろうか(アクトビラではゲートウェイを用意し、一般的なWebサイトへの接続ルートも用意するようだが)。

 あまりにインターネットが生活に浸透してしまったため、「ネット」という言葉がイコールでインターネットを指すことになってしまい、このような誤解、思いこみを生む結果となってしまっている。

 メーカーには正確な機能と意味をアピールする責任があるだろうが、私たち利用者側も「ネット」の意味、イメージをもっと正確に捉える必要がある。そうしなければ、「テレビでネット」に対して過度な期待を持ち、落胆するコトになりかねない。

それでも「テレビでネット」は有益か

 さて、「テレビでネット」に過度な期待をしない(?)心の準備ができたところで、改めて、テレビのネットワーク対応(正確にいれば、放送による映像以外のコンテンツをテレビで利用すること)がユーザーにとって有益なのかを考えてみよう。

 すでに地上デジタル放送を視聴しているユーザーならば、データ放送の利用で体感しているかもしれないが、現在のデジタルテレビは単なる放送波の映像受信装置以上の能力を持っており、その能力は新たな利便性を利用者へもたらしてくれる。

 データ放送を利用すれば常に天気予報や番組表を見られるが、これは使ってみると想像以上に便利で快適だ。筆者宅ではこれまで朝食の時間帯、「天気予報を常に画面に写しているか」を基準にチャンネルを選んでいたが、デジタルテレビ導入後には朝食時間帯はチャンネルを問わず、データ放送の画面を開きっぱなしで天気予報を見るのが常になった。

 では、その新たな利便性をユーザーへ提供するために、「テレビでネット」の普及を考えるメーカー、事業者は何を念頭にしなければならないか。まずは一足先に普及したインターネットを見習うべきだろう。インターネットがここまで普及したのは、あらゆる意味での柔軟性や可用性が、既存のネットワークサービスに比べても非常に高かったからだ。

 だが、柔軟性だけを念頭にするならば、汎用機であるパソコンを利用した方が実用性は高い。「テレビでネット」がある程度の柔軟性を備えながらも、リビングの中心に位置するという特性をいかしたテレビならではの特徴を持ち合わせなければ、ユーザーはネット接続可能なテレビの前でパソコンの電源を入れることになる。現状はまさにこの段階だ。

 テレビならではの特性・特徴とはなんだろうか。それはこれまでに積み上げてきた操作性やとっつきやすさ、つまりは「使いやすさ」にほかならない。「テレビでネット」を本気で普及させたいと考えるならば、チャンネル選択と同レベルのとっつきやすさが求められる。最低でもデータ放送の利用インタフェースと同レベルの分かりやすさが必要になるだろう。

 そうした使い勝手がメーカーを問わずにすべてのテレビで提供されて初めて、「テレビでネット」が映像受信以外のサービスとして、データ放送と並ぶレベルに到達することになる。メーカーの垣根を越えるという意味では、松下電器産業/ソニー/シャープ/日立という大手家電メーカーが参加するアクトビラが存在感を示す可能性はある。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.