「テレビでネット」の機運が再度、盛り上がりを見せつつある。
ちょっと前の話になるが、10月2日にテレビポータルサービスがブロードバンド接続機能を持ったデジタルテレビを対象にするネットワークサービス「acTVila」(アクトビラ)の構想を発表した。同時期に開催されたCEATEC JAPANでも、経産省と総務省が共同開催する「情報家電ネットワーク化に関する検討会」がブロードバンド回線をテレビのインフラとして利用する構想のデモを行った。
リビングの中心に位置する家庭用テレビをネットワークサービスの受け手にしようという構想は以前から存在しており、これまでにもパナソニックの「Tナビ」などが提供されてきた(Tナビは将来的にアクトビラに事実上吸収される)。だが、これまでのところ、成功したとは言い難い。
“テレビでネット”は本当に必要なサービスなのだろうか?
本来は汎用機であるパソコンや、電話機である携帯電話にとってもネットワークは切っても切れない関係となったが、テレビだけは放送波の受像器にすぎない状態が長く続いている。そこで、家庭にブロードバンド回線が普及したいまこそ、テレビもネットワークに対応しようというアプローチ自体は自然なものといえる。
ブロードバンドの回線数は2006年9月の段階で2400万契約を突破しており(総務省 発表資料)、ADSLからFTTHへと高速化する傾向もハッキリと現れている。また、近年発売されている薄型テレビにはほぼ例外なくイーサネットポートが搭載されており、物理的にもテレビをネットワークに組み込むための条件は整いつつある。
ただ、そこには「テレビで利用できるネット」がイコール、インターネットではないという現状があることに注意しなければならない。サービス開始が予定されているアクトビラも含め、これらのサービスはいずれも物理的な接続インフラこそ(一般的な意味での「インターネット」と同様に)TCP/IPを利用しているが、基本的にはクローズドにサービスを展開してきた。そうした意味ではパソコン通信と同様だ。
筆者宅にある薄型テレビ「BRAVIA」(KDL-32V2000)にもイーサネットポートが用意されているが、その用途は「地上デジタル放送で展開されているデータ放送用」とマニュアルにも記載されており、パソコン的な利用は想定されておらず、Webブラウザソフトも備えていない(データ放送用のBMLブラウザは搭載している、が……)。
Webブラウザも改良が進んでおり、素人目にもテレビに搭載することは問題ないように思えるし、事実、これまではWebブラウザを搭載したテレビも相当数出荷されていたが、最近では搭載する製品の方が少ない。メーカー側はテレビを「リビングに設置された大きなPCにはしたくない」という意向を持っているようだ。
これは、テレビに「情報家電」としての新たな位置や付加価値を与えるため、メーカーが意図的にパソコンとの差別化を進めているためだと考えられるが、果たしてそれはユーザーにとって有益な判断と言えるのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR