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2001年9月11日、アメリカン11便がワールド・トレードセンター北棟に、続いてユナイテッド175便が南棟に激突した。その衝撃的な映像はメディアで連日取り上げられ、私たちの記憶の中に今も深く強く残っている。しかし、ターゲットに到着することなく墜落してしまった4機目については、これまで多くを語られることはなかった。本作はそのユナイテッド93便に焦点を当て、事件の全体像を浮き彫りにした人間ドラマである。
午前8時42分。ニューアークからサンフランシスコに向けて飛び立ったユナイテッド93便は、乗員乗客40名を乗せて、30分ほどの遅延ながら、穏やかなフライトを続けていた。一方、地上のボストン管制センターでは飛行機が次々とレーダーから消える事態が発生。情報が錯綜する中、防空指令センターも厳戒態勢に入る。そして、93便でも4人のテロリストが行動を開始していた。乗客たちは携帯電話で家族と連絡をとり、2機がワールド・トレードセンターに、1機がペンタゴンに激突したことを知り、自分たちの置かれた運命を悟る……。
手持ちカメラを使ったブレブレの映像が臨場感と恐怖を煽る本作。もし自分がこの機内にいたとしたら、どんなことを考え、行動するのか?地上にいる家族に連絡をとる者、手帳に遺書を書きとめる者、神に祈る者、テロリストに立ち向かう者…。また管制センターのパニックぶりも映し出され、なす術もなくただ見届けることしかできない彼らの苦悩の表情が痛々しい。
「ボーン・スプレマシー」のポール・グリーングラス監督は、かつて北アイルランドで起きた公民権デモ、“血の日曜日事件”を再現した「ブラディ・サンデー」で批評家から絶賛を浴び、いわばこのジャンルを得意としている。
真実を描くことにこだわったという監督は、慎重に遺族と向き合い、航空管制官や軍関係者にも綿密な取材を行い、ボイレコーダーに残されたやりとりなどから、物語を構築。作品をよりリアルなものにするため、あえて無名の俳優を起用した。ここで描かれる機内の様子は推測の域を出ないわけだが、その緊迫感はまるでドキュメンタリーを思わせる。
特典は監督によるオーディオ・コメンタリーの他、遺族が“YES”のゴーサインを出し、映画化が実現するまでのドキュメンタリー「ユナイテッド93:遺族と映画」、ユナイテッド93便に登場していた乗員・乗客全員の人物紹介「犠牲者を偲んで」を収録。
事件から5年経った今も生々しい傷跡は決して癒えることはない。事件を風化させまいという監督の強い思いが感じられる究極の再現ドラマを、しっかりと目に焼き付けておきたい。
関連サイト:http://www.universalpictures.jp/sp/united93/(公式サイト)
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