この1年と少しの間に、家庭向け映像プロジェクターを取り巻く状況は、ガラリと変わってしまった。特にTexas Instruments(TI)が開発した映像素子「DMD」を用いるDLP方式のホームプロジェクターは、価格面でも画質の面でも、全く新しい局面に入っている。
ここで一度、DLPに関する情報をリセットし、約1年前にさかのぼって状況の変化を整理しつつ、DLPの現況をまとめてみたい。
急速に進歩したこの1年。その背景とは?
DLPは高いコントラスト、ユニフォミティ(色や明るさの均一性)、先鋭感などを実現できるプロジェクター方式として、データプロジェクターからハイエンドのホームシアタープロジェクターまで幅広く応用されてきたことは、この記事を読んでいる読者ならご存知のことだろう。
特に720p解像度を実現した0.85インチパネルのHD2は、毎年のように改良を重ねながら、100万円を超える各社のフラッグシップモデルに採用され続けてきた。解像度で同スペックを持つ他方式よりも解像感が高く見え、しかも高いコントラスト比による立体感のある描写。それに製品間のバラツキが少ない安定した画質や階調表現は、DLPならではのものだった。
しかし一方で、高解像度化ではやや進捗が遅れたこともあり、フルHDへの対応が後手に回り、また価格面でもなかなか普及価格帯に降りてこないという問題も指摘された。シリコンウェハー上に半導体プロセスと同様の手順で処理を行うことで、可動部のあるメカを作り出すMEMS技術では、これ以上に集積度を上げるのが難しいのでは? との指摘もされ始めた。
ところがTIは昨年夏、低価格の小型ワイドXGA対応DMDを開発。さらにその年の秋にはフルHD対応のDMDまで発表した。加えて半導体技術の進歩は、DMD素子でカラー表現を行うための演算チップの能力も大幅に引き上げた。
この新しく画素密度を高めた世代のDMD素子において、DLPは720pの低価格化と家庭向けフルHDプロジェクターの実現、それに画質向上といった目処を一気に付けてしまったのである。
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