なんといってもKiss D Xの目玉は、キヤノン初搭載となるゴミ取り機能だ。キヤノンでは総合的なゴミ対策を標榜していて、ゴミが出ないように部材を工夫したり、静電気を逃がすようにしてゴミをつきにくくしたりといった配慮をしつつ、撮像素子前面にあるローパスフィルターを超音波で振動させてゴミを落とす仕組みを搭載した。
もともとゴミ取り機能はオリンパスが早くから始め、ここにきて各社が追随しているといった感じ。キヤノンの方式はオリンパスに近いやり方なので、オリンパスと同レベルの実力があれば効果は期待できる。筆者自身がレビューしている間は、レンズ交換は頻繁にしたものの、特にゴミはつかなかったようだ。ただ、これがゴミ取り機能の効果かどうかは、テスト期間が短かったため、何ともいえない。
また、キヤノンはあらかじめゴミの位置を画像に書き込み、付属の「Digital Photo Professional(DPP)」から1クリックで消去してくれるソフトウェア的な仕組みも導入。キヤノンの発表会ではかなり効果が高そうだったが、これも実際に使い込んでみないと正確なところは分からないというのが正直なところだ。
ただ、この機能があるのとないのとでは大違いなはずだ。ゴミを落としてくれる可能性がある仕組みはどんどん搭載してもらいたいし、今後もブラッシュアップを期待しておきたい。
ちなみにゴミ取り機能は、電源オン/オフ時にそれぞれ動作する。手動でのゴミ取り動作も可能だ。
基本的な操作はKiss D Nを踏襲しているので、あまり目新しさはないが、操作性は少しずつ改良が加えられている。たとえば背面の露出補正ボタンが少し位置が上にずれ、ドライブボタンと押し間違いをしにくくなった。ドライブボタンの下にあったイージープリントボタンは、もともと撮影中には使われないボタンだが、これが本体左上にずれたのも押し間違いを防ぐ意味でいい感じ。
十字キーに割り当てられている機能は上がISO感度、右がAF、下がホワイトバランス、左が測光方式で変更なし。液晶左側に並ぶボタンは、DISPボタンとMENUボタンが入れ替わっている以外は、こちらも変更はない。
液晶モニタに撮影情報を表示するようになったからか、撮影設定を変更するボタンを押した際の動作も少し変わり、たとえばドライブボタンを押すと、まず設定画面が表示され、それからダイヤルを回すことで連写、セルフタイマーと変更する形になった。これまでは、ドライブボタンを間違って押してしまい、設定がいつの間にか変わっている、ということもあったが、そうした間違いがなくなった。
細かい違いだが、順当な改善点であり、使い勝手は高まっていっている。細かい部分でもきちんと改善されているのは好感が持てる。
再生モードでは、従来通りの9コマサムネイルやジャンプボタンによ10枚/100枚ジャンプなどはあるが、相変わらず素っ気ないぐらい。コンパクトデジカメではカレンダー風の日付ごとの写真表示ができるようになっているが、こちらはまだ対応していない。
EOS Kiss Digital Xは、これまでのキヤノンのバージョンアップらしく、そつなく、スキのない進歩を遂げている。他社に比べて遅れていたゴミ取り機能の搭載も果たし、残るはボディ内蔵の手ブレ補正機能ぐらいか。もっともニコンと並んでキヤノンがボディ内蔵を実現する可能性はかなり低そうだが。
やはりファインダーの質の向上は望みたい部分。ほかには、コンパクトデジカメからのステップアップが多いKiss Digitalシリーズなのだから、SDカードを採用してもいいように思える。筐体内のスペース削減にもつながることも期待できるのだが、逆にこれまでのCFカードスロットの部材が共通化でコストダウンにつながっているとしたら、むしろコストアップしてしまう可能性があるかも。
いずれにせよ、小型軽量で低価格デジタル一眼レフカメラの雄の名に恥じない完成度の高いモデルではある。
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