これまではメッセージングやビジネスアプリの活用が主で、日本のようなマルチメディア機能はあまり重視されてこなかった米国の携帯電話市場だが、「iPhone」(関連記事)とともに、米国で今年注目を集めそうな技術のデモがInternational CESの会場で行われていた。QUALCOMMの携帯電話向け放送技術「MediaFLO」だ。
MediaFLOは基本的にはワンセグ放送と同じOFDMを用いる技術だが、クライアントを携帯電話に特化することで周波数利用効率を高めているほか、既存の3G端末に専用チップを付加するだけで対応可能となる点が特徴。これまでも各種展示会などでデモが行われてきたが、この度商用ベースのサービスで採用されることとなった。
ビデオストリームのほか、オーディオストリーム/クリップキャスティング/IPデータキャスティングの各情報を受信でき、ビデオはQVGA(320×240ピクセル)/30fpsの映像を扱える。
米国ではVerison WirelessがMediaFLOを利用した携帯電話向け放送サービス「V CAST Mobile TV」の開始を発表しており(1月9日の記事参照)、International CESの会場では、対応端末の「SCH-u620」(Samsung Telecommunications America)、「LG VX9400」(LG Electronics MobileComm U.S.A.)で動画の動く様子を見ることができた。
MediaFLOは携帯電話用の周波数とは別の周波数を用いて端末へ伝達される(米国では716〜722MHzが割り当てられている)。そのため、帯域に余裕のある時間帯に配信され、端末に保存された番組を見たいときに視聴したり(クリップキャスト)、天気や株価など更新頻度の高い情報を差分だけデータ受信する(IPキャスト)といった、これまでの携帯電話にはないサービスが利用可能となる。
会場では試験電波によるストリーム再生のみが視聴できたが、コマ落ちなどもなく、快適に視聴できる。また、チャンネル切り換えやEPG表示などのアクションが機敏に行えたのも印象的だった。
車社会の米国で携帯向けの動画配信サービスは普及しないのでは? という意見もあるが、ブースはかなりの盛況。訪れた人が興味深そうに端末を操作していた。同社によれば放送局はもちろん、広告関係の企業などからもすでに問い合わせを受けているという。
「米国が車社会であることは確かだが、MediaFLO(MediaFLOを採用したサービス)は外出先だけではなく、家の中でのちょっとした空き時間、ニッチタイムを狙うサービスと認識している。MibiTV(2004年からサービス提供されている携帯向けラジオ/テレビサービス)も多くのユーザーを獲得しており、MediaFLOも十分に受け入れられるはずと考えてる」(同社)
日本ではワンセグ対応端末が多く登場しており、「動画(放送)が見られる携帯」というだけではインパクトに乏しいのが現状だが、QUALCOMMの日本法人、クアルコムジャパンは、クリップキャスト機能の「見たいときに見たい番組を見られる」というメリットを中心に訴求していきたいという。
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