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42インチWXGA機が999ドル? “パナソニックショック”の真実2007 International CES(1/2 ページ)

» 2007年01月18日 16時44分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 パナソニック・ノースアメリカ(Panasonic North America)はここ数年、北米におけるPDPシェアを大幅に増やし、“パナソニック”のブランドも消費者に急速に浸透していた。デジタルコードレスホンの会社から、先進的な薄型テレビのブランドへ、そしてデジタルカメラのブランドも徐々に浸透して順風満帆。昨年の1月にパナソニック・ノースアメリカ社長の河野優氏は、一昨年に30%から40%、そして週ごとの集計においては瞬間的に50%を超えたPDP市場でのシェア拡大に喜んでいた。

 しかし現在、パナソニックのシェアは40%から50%には伸びず、30%台前半にまで落ちてしまった。くわえて他社が“パナソニックショック”と呼んだ、パナソニック製プラズマテレビの安売りが日本で劇的に報道されたこともあり、“パナソニック危うし”あるいは“日本家電沈没”といった極端な意見も出始めている。

 さて、そのパナソニックショックについて、当事者の河野氏に伺ってみた。

photo パナソニック・ノースアメリカ社長の河野優氏

「値下がりは“ブラックフライデー”のみ」と河野氏

――サンクスギビングの翌週末、パナソニック製の42インチWXGAプラズマテレビが999ドルで販売され、他の家電メーカーからも驚きの声が上がっていました。中には、対LCDのプラズマシェアを上げるために意図的に流通と仕組んだのでは? との意見もあります。

 「通常、こうした特売を全米で行う場合、広告を3週間前に印刷する関係から事前に情報を察知し、対策を施すものなのですが、今回は直前まで全く分かりませんでした。直前にベストバイからの大量発注があり、何か怪しいとは考えていましたが、あんなとんでもない金額が出るとは予想していません。完全に客寄せ用商品として使われてしまいました」

――なぜ事前に察知できなかったのですか?

 「インターネットのみで、ブラックフライデーの直前に告知が開始されたからです。別の流通ではED(WVGA)モデルの42インチが799ドルというものもありました。その上、ベストバイには“モノが足りない”と叱られる始末で……」

――日本人には「ブラックフライデー」という言葉がよくわからないのですが、詳しく聞かせてください。

 「米国の年末商戦は、サンクスギビング(感謝祭)が終わった次の金曜日から開始します。この時に目玉商品を並べて客を集め、文字通り“黒字の金曜日”にしようと米流通各社は画策します。ブラックフライデーは、特別に朝5時から店を開け、正午までの7時間限定で超激安商品を販売するのです。在庫が終わればその時点で完売。非常に限定的な安売りの習慣です。他社、たとえばサムスンやソニーも今年は使われました」

――そのブラックフライデー限定の999ドルが、ここまで日本で報道されたのはなぜだと思いますか?

 「1つには、ブラックフライデーという考え方そのものが、あまり日本で馴染みがないということがあるでしょう。もう1つは、日本の一流メーカーが使われたということです。従来は中国製の安いプラズマテレビが選ばれることが多かったのですが、今回はわれわれの製品が選ばれてしまった。ブラックフライデーを成功させるために、プラズマテレビではもっとも名の通ったパナソニックの製品を選んで客寄せをしたのです。なにしろ、われわれの42インチHDプラズマテレビは、通常価格が1799ドルで価格安定しています。それがいきなり800ドル引きになったのです」

――その後、価格は戻っているのでしょうか? 定着しつつあったパナソニックのブランドに、今回の事件が傷を付けるといった結果にはならないでしょうか?

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