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コラム
» 2007年02月19日 11時00分 公開

小寺信良:Windows Vistaに必要な何か (3/3)

[小寺信良,ITmedia]
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デスクトップ型は「透明家電」へ

 AV機能に関しては、さらにVistaの必要性が高まらない事情がさらに2つある。一つはPCの主流が、デスクトップ型からノート型に移ってしまったことである。巨大AVノートPCには、デジタルチューナー搭載といったおごったものも存在するが、モバイルノートではアナログテレビチューナーすら搭載する必然性は薄い。

 もう一つは、思いのほかワンセグの使い勝手が良かったことである。デジタル放送の場合、ちゃんと本放送を受けるためにはB-CASカードスロットも用意しなければならないし、地上波以外にもデジタルBS、110度CSの全波対応が義務づけられている。さらにはデータ放送用のインタラクティブ機能、4色カラーボタンのリモコンなど、かなり大がかりな話になる。

 だがワンセグであれば、モバイルノートでも十分視聴可能だし、USBメモリ程度の機器を挿すだけで済む。またテレビとして大型画面で構えるよりも、もともとAVパソコンが得意とした「ながら見」や「ちょい見」サイズが、逆に便利だという声も聞こえてくる。もちろんケータイがワンセグ対応になり、少なくとも見るだけならば、ノートPCすらも不要になってきたという事情も無視できない。

 Vista対応PC購入すると考えたときに、ショップブランドで組めば、Vistaの機能に十分なスペックのPCはおそらく10数万円で買えるだろう。しかしはたしてこれまでのようなタワー型デスクトップのような拡張性が、今後必要となるだろうかという懸念を、筆者は捨てられずにいる。例えば今後、PCIスロットにデジタルチューナーカードを挿したり、サウンドカードを換えたりといったことを、やるだろうか。

 今後これらのPCIカードタイプ製品がどしどし発売されるような時代とは、あまり思えない。おそらくこれらの拡張を迫られた場合、USBなどを使った外部接続で間に合うのではないだろうか。

 モニタの低価格化・大型化を考えれば、デスクトップ型というジャンルがゼロに近づくほど衰退するとは思えないが、様変わりは確実にするだろうと予感している。例えば古くはPower Mac CubeやMac mini、最近ではソニーTP1のような、自作臭さを感じさせない「デザインPC」が、デスクトップ機の主流となるのではないか。

 そこには、PCの情報家電化の象徴があるような気がする。黒物でも白物でもない、「透明家電」の誕生である。これまで四角い箱がウィンウィンうなってるのは仕方がないと思っていた価値観が転換し、存在すること自体が楽しいものや、目についても気にならないモノにならないか、という動きは確実にやってくる。特にモニタがPC専用ではなくテレビになってくれば、その傾向はいやがうえにも強まっていくだろう。

 その一方で、PCの代表的な用途は、もはやPCじゃなくてもいいというところまで来ているのも事実だ。メールはケータイのほうが手軽だし、テレビ録画はレコーダの安定性に適わない。サイトのブラウジングはゲーム機で十分になりつつある。

 万能ツールとしてPCをPCらしく使う人、ハイエンド情報家電として使う人。その双方に明確なメリットが見えてこないうちは、Vistaへの移行は現状から長い時間をかけて少しずつ進行するだけで、多くのPC関係者が期待しているような数字はなかなか出てこないだろう。


小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

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