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Windows Vistaに必要な何か小寺信良(2/3 ページ)

» 2007年02月19日 11時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]

なぜVistaはすぐに飽和したのか

 Windows Vista導入に関しては、助走期間が長かったこともあって、かなりのマシンパワーが必要とされることは十分周知されているように思う。また新OSらしい機能を使うには、一番下のHome Basicではダメだろうということも、多くの人は理解している。

 Vista導入にあたって、現在のWindows XPからアップグレードすると言う人は、どれぐらいいるだろうか。ゆくゆくはそのあたりの数字も具体的なデータとして出てくることと思われるが、アップグレードして十分使えるようなマシンを持っている人、あるいはVista導入を前提にしてXPマシンを新調した人は、そうそうにアップグレードを済ませてしまっていることだろう。

 それならばVistaに十分対応できるよう、パーツ交換でハードウェアもアップグレードしたらどうか。ある意味正当派とも言えるアクションだが、多くの自作派はXP安定期の間に、そういうことが面倒になってしまっている。あるいは規格世代が隔たりすぎていて、小手先のアップグレードではついて行けないという状況もあるだろう。

 そうなると次の選択は、Vista用のマシンを新しく買うということだ。しかし2万〜3万円出してOSのアップグレード・パッケージを購入するのと、20万円近く出してマシンごと買うのでは、必然的に動きは違ってくる。金額を問題視しない人、あるいはこのために今までPCを買い控えていた人は、やはりすぐに買っているだろう。現在の状況は、ここなのだと思う。

 過去の例からすれば、それ以外の人が導入に傾くためには、現状のXPにどれだけ不満があり、それがVistaでどれだけ解消されているかがキーになる。では現状のXPに、使っていてダメダメだと思うような不満があるだろうか。もしユーザーが逃げ出したくなるほどダメな環境だったら、Macのシェアはもっと上昇しているだろうし、Linux雑誌が次々に廃刊になるようなこともなかったはずだ。

 また多くのアナリストからは同一ハードウェアにおいて、Vistaではアプリケーションの動作速度やバッテリーの持続時間が低下することが指摘されている。それだけのリスクを負って、さらに約20万円の投資をして得られるのがウインドウが斜めに重なることだったり、ちょっと半透明になることぐらいのことなのであれば、今急いで買うことはないと考えるだろう。

 もちろんWindows Media Centerの機能が組み込まれたことも、大きな変化であることは承知している。しかしこの手のAVパソコン的機能は、もともと国産PCメーカーのお家芸であった。何を今更、ととらえられているのも事実だろう。

 事態をさらに悪くしているのは、デジタル放送のコピーワンスだ。マイクロソフトはコピーワンス対応に向けて国内ベンダーと協議するなど前向きな姿勢を見せていたが、結局は間に合わなかった。一方国内でも、昨年からコピーワンス撤廃への議論が活発化していたが、リリースまでに明確な方向性を打ち出すことができなかった。

 続けるのかやめるのかがはっきりしないことには、マイクロソフトとしても無駄な開発に終わる可能性がある。世界中で日本だけの特殊事情のために、リソースをどれだけ割いてくれるだろうか。

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