2006年の映画賞を総なめ。“女子系”監督の枠にはとても収まらない西川美和の才能を知らしめた「ゆれる」が、オールカラーブックレット付きでDVD化。メイキング映像には主演のオダギリ ジョーと香川照之、そして監督インタビューも収録。血のつながった者ゆえの愛情も憎しみも等しく描き尽くす傑作です!
発売日:2007年2月23日 価格:3990円 発売元:バンダイビジュアル 上映時間:119分(本編) 製作年度:2006年 画面サイズ:ビスタサイズ(一部スタンダード)・スクイーズ 音声(1):ドルビーデジタル/2.0ch/日本語 |
日本映画に元気があると言われているけれど、それは本当だろうか。日本映画製作者連盟の発表によると、2006年は邦画の興行収入が21年ぶりに外国映画を逆転したそうだ。
確かにそれは事件だけれど、昨年のヒット映画を見回してみると、リメイクやTVドラマの劇場版、小説・漫画の実写映画化の氾濫。よく言えば“メディアミックス”、悪く言えば――というよりもその実――映画そのものの力に依って立っていない作品が目立っている。
それが悪いというわけではない。しかし実際のところ、オリジナリティのない映画が多すぎる。安易に小説や漫画の面白さに頼りすぎる。想像力がなさすぎ……以下略。06年のヒットランキングで邦画第2位が「LIMIT OF LOVE 海猿」だもんなあ……。これ以上書くと、頑固オヤジですね。
そういうことで、真の意味で2006年の邦画界を代表する映画は? と尋ねられたら、この「ゆれる」を挙げたい。挙げてゆきたい。
手がけたのは、74年生まれの女性監督・西川美和。2年の歳月をかけてオリジナル脚本を執筆し、後に自ら書き下ろした小説版『ゆれる』(ポプラ社)を上梓している。
西川監督のデビュー作「蛇イチゴ」(02)も自身によるオリジナル脚本を映像化したもので、物語志向の強い人なのだ。
ストーリーはシンプルだ。シンプルすぎると言ってもいい。対照的な兄と弟と、幼なじみの女性が渓谷へドライブに行く。弟が目を離したすきに、吊り橋から女性が落ちて死んでしまう。橋の上には、兄がいた。出来事は不幸な転落事故として処理されるが、後日、兄は自分が智恵子(女性の名前)を突き落とした、と刑事に口走る……。
兄は拘置所に入れられ、公判が始まる。智恵子が死んだのは、事故だったのか、それとも兄が突き飛ばしたのか。公判の数が重なってゆくにつれて、各自の心の奥底に潜んでいたものが、次第に浮かび上がってくる。
東京でカメラマンとして活動する弟。地元で家業のガソリンスタンドを継ぎ、父親とずっと同居している兄。女にもてて、金を稼ぎ、故郷を捨てて格好いい弟と、それとは正反対の兄。誰からも“いい人”と見られ、温厚で決して怒らず、常に受身でそれ故に無意識のうちに彼を見くびってしまいそうになる、そんな兄。
兄は自分のスタンドで働く智恵子に想いを寄せ、それは智恵子も気づいていた。しかし、智恵子が昔から焦がれていたのは弟の方だった。“いい人”はいつも、恋愛の対象にはされない。
一方、弟は、兄の智恵子への気持ちを知り、その上で彼女を誘って簡単に抱く。とても簡単に。その翌日、智恵子は死ぬ。兄は、弟と智恵子のことを知っていたのか。
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