1976年に全米で公開され、作品賞などアカデミー賞3部門を受賞した不滅の名作「ロッキー」。
場末のリングで戦う、落ちぶれたボクサーがただのチンピラでないことを証明するために、チャンピオンとのタイトルマッチに挑むというスポ根映画の原点がBlu-ray Discで登場した。公開から30年を経たこの名作は今でも多くの人々に愛され続けているが、BDでは果たしてどのように復活したのか? チェックしてみた!
発売日:2007年2月28日 価格:4935円 発売元:20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン 上映時間:120分(本編) 製作年度:1976年 画面サイズ:ビスタサイズ・スクイーズ 音声(1):DTS−HD/5.1ch/英語 音声(2):DTS/モノラル/日本語 |
日本で「ロッキー」が公開されたのは、全米公開の翌年1977年4月。オスカー受賞後の公開でもあり、劇場には観客が殺到したと聞く。当時10歳の自分は残念ながら、まだこうした映画に関心があるはずもなく、リアルタイムでの鑑賞は叶わなかった。しかし劇中に流れる「ロッキーのテーマ」は至る所で流れており、タイトルだけは知っているという状況だった。
自分がはじめてこのシリーズに触れたのは79年夏に公開された「ロッキー2」だった。その時点でシリーズ1作目は未見だったが、どうしても見たくて、大混雑の映画館に足を運んだ。結果、初めて映画でボロ泣きしてしまい、映画の持つパワーに圧倒されてしまった。
日本では「ロッキー2」が大ヒットしたことを受けて、翌年2月一部の劇場で「ロッキー・フェスティバル」を開催。要は「ロッキー」と「ロッキー2」を2本立てで上映するだけなのだが、これにも観客が殺到。2週間の予定が劇場を移してあちこちで続映されることとなった。
82年の「ロッキー3」は宿敵アポロが弱気になったロッキーを立ち直らせると言うストーリー。サバイバーが歌う主題歌「アイ・オブ・ザ・タイガー」も大ヒットした。
85年の「ロッキー4 炎の友情」はスタローンの政治思想がモロに出てしまった作品で、敵はソビエト(当時)の屈強な戦士ドラゴ。演じたのはドルフ・ラングレンだった。日本ではこの時がスタローン人気の絶頂で、初日には1500席ある新宿ミラノ座が入場しきれない観客であふれ返っていた。
90年の「ロッキー5 最後のドラマ」は人気が凋落したスタローンが復活を賭けて製作し、監督に第1作のジョン・G・アビルドセンを招いたものの、一向に盛り上がりに欠け、「4」と同じミラノ座で公開されたが初日は閑散としていた。
だが、公開から30年を経た今年、「ロッキー・ザ・ファイナル」が全米で公開。日本でも4月20日から劇場公開される。最初、製作の噂を聞いたときは「何の悪い冗談か?」と思ったが、これが思いのほかいい出来なので、だまされたと思って劇場に足を運んでもらいたいと思っている。
以上、前置きが普段にも増して長くなったが、「ロッキー」というシリーズはそれだけ多くの人々に愛され、時代に影響を与えてきたものだということを知ってもらいたかったのだ。
話を第1作の「ロッキー」に戻そう。この作品は、当時無名の俳優だったシルヴェスター・スタローンが脚本を書き、売り込みを始めたところからスタートしている。スタローンはテレビでモハメド・アリとチャック・ウェプナーのヘビー級タイトルマッチにヒントを得て、脚本を執筆した。この試合、事前の予想では圧倒的にアリが優勢だったが、ウェプナーは善戦し、試合を見た人々を驚かせたのである。
自分の境遇にこの試合を重ね合わせたスタローンはわずか3日で脚本を完成させる。スタジオ側はこの脚本に高値を付けたが、スタローンは自分が主役をやることを譲らず、最終的に低予算で映画は製作されることとなったのだ。
業界の期待は全くなかったものの、丁寧に描かれたキャラクターの魅力や、ビル・コンティによる楽曲の素晴らしさが観客を熱い感動に巻き込み、全米で空前の大ヒットを記録、大きな社会現象となった。
オスカーではシルヴェスター・スタローンは主演男優賞や脚本賞を逃すが、作品賞、監督賞、編集賞を受賞。スタローンは一躍第1級のスターになり、アメリカン・ドリームを実現させた。
さて肝心のBlu-ray Disc版だが、本編を1080pの高画質で収録。音声はオリジナルの英語をDTS-HDマスター・オーディオ(ロスレス)で、日本語吹替版をモノラルで収録している。北米版には公開当時のモノラル音声も収録されているのだが、それは見送られたようだ。
視聴は、プレイステーション 3とヤマハのAVアンプ「DSP-AX4600」をHDMIで接続し、映像は42インチのプラズマと液晶プロジェクターによる80インチのスクリーン再生で行った。
CH-1はフィラデルフィアの場末のリングから始まる。いかにも貧乏なホールで、照明もトップライトのみで相当暗い。映像はフィルムグレインが乗って、映画的な臭いが立ち込めている印象だ。この試合に勝利したロッキーだが、手にしたギャラはわずかばかり。次の試合も当分先で、これで生活できるはずがない。
CH-2では自宅に帰ったロッキーの様子が描かれる。冷蔵庫や棚の汚れがリアルだ。また散らかった部屋の中にさりげなく十字架が飾ってあるのも、彼の信心深さが感じ取れてうれしい。ロッキーはペットショップで働く女性エイドリアンに声をかけるが、彼女の服装もDVDよりはるかに地味に感じられるようになった。しかし、ちらりとロッキーを見返す瞳の奥に彼女の気持ちも垣間見え、高画質がそうした感情を表出させてくれるのをうれしく感じる。
CH-3はロッキーが生活のために、借金取りをしている様子が描かれる。港に停泊した船の大きさがスケールアップして迫ってくるようだ。フィラデルフィアの雑多な様子もよく見て取れる。スタローン自身、無名時代に同様のことをしていたので、この場面は演技というより、ドキュメンタリー的なタッチが感じられる。親分のガッツォには金を返さなければ、相手の指を折るよう指示されていたが、それができないロッキーの優しさが彼を好きにさせる。ガッツォに怒られた後、かすかに降り始めた雪が彼の心を物語っているようにも感じられる。
CH-4はボクシングジムの場面。有望な新人にロッカーを奪われ、トレーナーのミッキーからは「6年やっても芽が出ない。引退を考えな!」と言われる始末。ここでは周囲で練習している音がうまくサラウンドしており、ジムの空間を感じさせる演出が施されている。
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