前回のコラム(コラム:ムービーがテレビを捨てる日 )では、後半からコンシューマ発の動画コンテンツ産業の可能性について考察した。掲載以降、そういう視線でいろいろなものを見たり、また取材を進めていくにつれて、実態はもっと違ってくるのではないかと思えるようになってきた。今回はコンシューマ発の動画コンテンツ、「CGV」(Consumer Generated Video)というメディアは成長可能なのかという点について考えてみたい。
前回のコラムでは、能動的にコンテンツを作るテレビ局に対し、無限のハプニングチャンスを持つ一般人の集合体としての動画ポータルという図式を考えてみた。だが実際はテレビ局側も、ハプニングを収録するという方法論に対して手を打っているということがわかった。
例えばバラエティ番組のロケでは、ディレクターがHDVのカメラを持ち、ロケの間中録画を止めずに回し続けるという手法が激増している。ロケが8時間かかるとしたら、移動中も含め8時間全部を撮影し続けているのだという。
これはもちろん、タレントの身に起こるハプニングを収録するためである。同じハプニングが起きるにしても、一般人に対して起きるのとタレントに起きるのとでは、やはり価値が違う。さらに言えば、テレビ番組制作がこのような手法を取り入れたということは、これが「高効率」であるという意味でもある。ハプニングに対してのリアクションはタレントのほうが手慣れていることもあり、小さな事件でも十分ネタとして成立する可能性が高いからである。
以前に「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」という映画がヒットしたことをご記憶だろうか。学生がドキュメンタリー作品を作るという体裁を取ったもので、16ミリフィルムとビデオで撮影されている。低予算の制作費ながら、仕掛けの上手さで大ヒットした。
この作品を、映画制作手法そのものではなく、学生がドキュメンタリーを撮るという行為そのものの参考として捉えてみよう。映画の冒頭、撮影の準備をする主人公達が写っている。大量のバッテリとビデオテープを車に積み込んで出発するわけだが、現実問題として彼らのような方法で、アマチュアがドキュメンタリーを作成するということが可能だろうか。
ここで大きな問題は、撮影コストである。バッテリに関しては、今はかなり効率が良くなっているとは言っても、それ自体は結構値の張るものだ。10個20個アマチュアが用意できるかとなると、まず無理だろう。まあこれは、車のACソケットなどを利用して充電するということを考えて行くしかない。
次にテープだが、これはまあ安くなっている。1ダース2ダース買うということも、現実に可能だろう。ただ、それを湯水のごとくという感覚になるかというところが、難しい。例えばプロの制作会社の場合は、メディア代はすべて制作費でまかなうことが出来る。ある意味会社の金で使い放題、という感覚にはなるだろう。
だが個人の場合、消耗品としてどんどん使い捨てていくような感覚には、馴染めないのではないだろうか。例えばデジカメがこれほどまでに普及した理由は、目の前でみるみる消費していくフィルムのような消耗品が存在しないから、ということではなかっただろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR