MPEG-4コンテナとしての要件を満たすものが「MP4ファイル」だが、その中に収める映像や音声のフォーマットはさまざま。映像規格を例にすると、ISO 14496-2 ASP(Advanced Simple Profile)準拠のビデオコーデックには、DivX5やXvid、ffmpegなどがある。音声はAAC(Advanced Audio Coding)としてISO 14496-3で規格化、対応するソフトにはQuickTime/iTunesやFAACが挙げられる。たとえば、映像をDivX5、音声をAACでエンコードしたファイルをMPEG-4コンテナに格納すれば、ISO-MPEG4 ASPに準拠したMP4ファイルの一丁上がりだ。
しかし、世の中には“映像部分だけISO MPEG-4 ASP準拠”のムービーファイルが流通している。これだけで判断することはできないが、拡張子が「.AVI」のファイル(以下AVIファイル)はその可能性が高い。動画はISO MPEG-4 ASP準拠のDivX5だが音声はMP3、同じく準拠のXvidだが音声はWAV、といったムービーファイルは、たとえ拡張子が「.MP4」だとしてもMP4ファイルではない。音声がAACだとしても、MPEG-4コンテナとしての要件を満たしていなければMP4ファイルにはならない。むしろ、ビデオコーデックがDivXやXvidのムービーは、AVIファイルが一般的だ。
なぜこのようなAVIファイルが普及しているかというと、作成者側に好都合なことが多いからにほかならない。ファイルフォーマットとしてのAVIの特徴の1つには、ファイル先頭に置かれる4文字の情報「FourCC」(下表参照)で使用するコーデックを指定することがある。映像と音声の同期を保つなどの仕組みがない反面、プロファイルにとらわれず映像/音声の条件をある程度自由に決定できるのだ。プレーヤーソフト/コーデックのインストールにより再生環境を整備できるPCの場合、AVIが好まれる理由はこの自由度の高さにあるといえる。
MPEG-4系コーデックに採用されているFourCCの例
FourCC | 対応するコーデック |
---|---|
DIVX | DivX MPEG-4 v4 |
DX50 | DivX MPEG-4 v5 |
MPG4 | MS-MPEG4 v1 |
MP42 | MS-MPEG4 v2 |
MP43 | MS-MPEG4 v3 |
mp4v | Apple MPEG-4/ISO MPEG-4 |
VP31 | On2VP3 |
XVID | Xvid MPEG-4 |
再生環境がハードウェアの場合、PCのように気安くプレーヤーソフト/コーデックを入れ替えることはできないが、現実のところMPEG-4対応をうたうハードウェアの多くはAVIファイルの再生にも対応している。iPodやPSPのようにファイル形式が厳しく定められている機器はさておき、ムービー再生機能付きHDDケースなどMPEG-4対応ハードウェアを選ぶ場合には、再生可能なコーデックの種類を重視するほうが現実的だ。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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