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コラム
» 2007年07月09日 10時20分 公開

小寺信良:次世代DVDが起爆しない5つの理由 (3/3)

[小寺信良,ITmedia]
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 しかも皮肉なことにコピーワンスは、さらにそれより悪いムードを産みつつある。つまり、「別に保存しなくてもいいやぁ」という状態である。それが行き着く先は、「録画してまで見なくていいかぁ」というところだ。それは、高解像度でオリジナルを見るという意味が薄れるということでもある。いくらやってもYouTubeのような動画配信はなくならないし、そこで面白いところだけちょっと見られればそれでいい、とする消費行動が、今まさに産まれようとしている。

買い直すほどでもない

 次世代DVDが広まるためには、まずそれが見られるハイビジョンテレビが普及しなければならない。だが実際には、まだSDのブラウン管でテレビをメイン見ている層が、6割を占める。これはまぎれもなく、日本の話だ。土台がないのに、上に家が建てられるわけがない。これが第5の理由だ。

 HDコンテンツの消費が増すためには、コンテンツの価格が下がらなければならない。次世代DVDだからという理由で倍近い価格に付加価値を感じられる層は、かなり限られる。多くの人はDVDの価格がリーズナブルだと感じているし、その画質で十分なのである。

 プレーヤーが米国で好調とは言うが、米国ではほとんどHD放送が行なわれていない。衛星放送では一部HDのものもあるが、基本的に地上波4大ネットワークがHD化しない限り、HDテレビは未だ金持ちの道楽でしかない。その人達は、基本的にコンテンツの値段の高い安いなど関係ない。

 また音楽と違って映像コンテンツは、繰り返し再生されるケースは少ない。いくら映画が好きでも、DVDで一通り揃えてしまったら、また同じモノを次世代DVDで買い直すサイクルに入るには、これから10年ぐらいはかかるだろう。

 この飽和状態を打開するには、コンテンツにライセンス制を導入するしかない。つまり、「俺たちはいったいいくつのパックマンを買ったんだ?」という話と同じである。プラットフォームが変わるたびに、同じコンテンツをその都度定価で買い続ける世界で納得できるのか。それならば、ソフトウェアのバージョンアップと同じように、旧メディアでコンテンツを保有しているユーザーは、アップグレード対象として格安で上位メディアを購入できるようなシステムがあっていいのではないか。

 このように行き詰まりの状況を整理していくと、今の次世代DVD戦略はあまりにも性急すぎる感じがする。うまくギアが噛み合う暇もなく、いろんな要素が個別に回転してしまっている状況だ。

 おそらく各メーカーも、次世代DVDにかけた開発費とプロモーション費を考えると、顔色が悪くなってきているカンパニープレジデントも居るのではないかと思われる。だが世界的に放送のHD化が遅れている現状で、記録メディアだけが先行するというのは、どだい無理な話なのである。

 次世代DVDが本当に必要とされる、あるいは必要とされないかもしれないが、それがわかるまではまだ相当に時間がかかる。消費者側の目線に立てば、普及に向けて打てる手はいくらでもあるはずなのだ。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は本コラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。

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