フルオート脱却の基本を知るためには、ある程度は写真撮影の知識を蓄える必要がある。その基本として知っておいてもらいたいのが「シャッタースピード」と「絞り」だ。カメラは人間の目に例えられることも多いが、その目の動きとなるのがシャッタースピードと絞りで、写真表現の基礎の基礎となる。今回はシャッタースピードを解説したい。
カメラは、レンズから入った光を、銀塩カメラであればフィルムに、デジタルカメラならCCDなどの撮像素子に光をあてることでその一瞬を切り取る。シャッターは普段は閉じていてフィルムや撮像素子に光が当たらないようにしているが、シャッターボタンを押すとシャッターが開いて光を取り込み、再び閉じる(この一連の動作が「シャッターを切る」)。
この開いている時間を短くしたり長くしたりすることで光の量を調整し、いろいろな写真表現を行うことができる。
シャッタースピードとは、このシャッターが開いてから再び閉じるまでの時間を指し、30秒、1/4000秒などといったように「秒」で表す。「シャッタースピードが遅い」(シャッターが開いている時間が長い)、「シャッタースピードが速い」(シャッターが開いている時間が短い)とも表現される。
シャッタースピードが速いと、動くものも静止しているように写り、動きの一瞬をとらえるのに役立つ。走っている人や車、動き回る動物や子供を撮ろうとする場合、シャッタースピードが速いとピタッと止まっているように写る。
逆にシャッタースピードが遅いと、動くものが流れるように写り、実際に被写体が動いているような写真が撮影できる。たとえば川や滝がダイナミックに流れている様子を表現したり、あえて動くものをブレさせて、スピード感を演出したりもできる。
シャッタースピードを速くするか遅くするかは、そのシーンに応じて、また自分でどんな表現をしたいかによって変わってくる。もし許すならば、同じシーンでもいろいろとシャッタースピードを変えて撮影しておくといい。
ただ、シャッタースピードが遅いと、被写体の人の顔までブレてしまったり(被写体ブレ)、画面全体がブレてしまったり(手ブレ)、写真として失敗と思われる状態になりやすいので気をつけよう。
シャッタースピードの速さで躍動感やスピード感を表すことができるが、シャッタースピードの変化にはもう1つの効果がある。それが取り込む光の量が変化する、ということだ。
シャッタースピードが速いと、シャッターは一瞬しか開かず、その分取り込める光の量は少なくなる。逆に遅いと、シャッターは長く開いているので、光の量は多くなる。
つまり、シャッタースピードが速いほど写真は暗くなり、遅いほど明るくなる。十分な光の量が取り込める晴天の昼間はシャッタースピードが速くてもほぼ問題はないが、曇りや夜間、屋内などではシャッタースピードが速すぎると写真が真っ暗になってしまう。
そのため、シャッタースピードをやみくもに速くすることはできない。写真を撮る場合は、被写体ブレ、手ブレが起きないようなシャッタースピードを稼ぎつつ、暗い写真にならないように、さまざまな機能を利用することになる。
次回は、シャッタースピードと同じく取り込む光の量を調整するための「絞り」について解説する。シャッタースピードと絞りをセットで理解して使いこなせば、写真表現の幅が一段と広がるだろう。
実は、シャッタースピードを任意に設定できるコンパクトデジカメは多くない。高機能/ハイエンドと呼ばれる機種であればたいてい設定できるのだが、そうした機種ではなくともモードダイヤルに「S」(シャッタースピード優先オート)があれば、それにあわせるとシャッタースピードを変更できるケースが多い。「S」モード以外で設定するカメラもあるので、ここはマニュアルを確認しておこう。
もしシャッタースピードを明示的に変更できないカメラでも、まったく操作できない訳ではない。
モードダイヤルを「シーンモード」(機種では「スペシャルシーンモード」「シーンセレクション」などとも)にあわせると、「スポーツモード」ではシャッタースピードが速くなり、「夜景モード」では遅くなるなど、カメラがある程度自動的にシャッタースピードに関する設定をしてくれる。このような方法で簡易的にシャッタースピードを操作できることも覚えておこう。
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