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変幻自在の移動ロボット――fuRoとL.E.D.が「Halluc II」を公開道がなくても駆けつけます

» 2007年07月26日 02時16分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)とリーディング・エッジ・デザイン(L.E.D.)は7月25日、最新の多脚移動ロボット「Halluc II」(ハルク・ツー)を公開した。fuRoとL.E.Dが共同研究を行っているHallucigenia(ハルキゲニア)プロジェクトの最新成果。先端に車輪が付いた8本の脚を持ち、状況によって“走行”と“歩行”を使い分ける「次世代の移動システム」だ。

photophoto 「Halluc II」

 多関節ホイール・モジュールと呼ばれる脚には、1本あたり7個のモーターが組み込まれ、移動時には状況に合わせて3つの形態に変形する。まず、舗装道路など路面状況が良いときに適した「ビークル(車両)モード」。車輪による高速移動が可能な上、車輪の向きを変えることで真横への移動(スライディング)や回転(スピニング)が行える。段差や坂道では、脚の関節を伸縮させて、車体を水平に保ったまま走行。半分の脚で車輪移動しつつ、残りの脚を手のように使ってモノを持ち上げる“ハーフ&ハーフ”も可能だ。

photophotophoto 「ビークル(車両)モード」。段差や坂道もなんのその(中)。最前列の脚2本を手のように使い、物体把握しながら移動中(右)

 2つめの形態は、昆虫のように脚を広げて歩く「インセクト(昆虫)モード」。車輪では移動できない路面状況の悪い場所でも高速に移動できる。そして3つめは、4足動物のように進行方向へ膝を出しながら歩く「アニマル(動物)モード」だ。移動速度はインセクトモードに劣るが、脚が車体の真下にくるため、狭い場所の移動に適している。

photophotophoto 「インセクト(昆虫)モード」(左)と「アニマル(動物)モード」

 これらの形態変形を可能にしたのは、合計56個に上るモーターを協調動作させる新開発の超多モーターシステム。また車体を上下に動作させるリフティング用の関節をすべてダブルモーターとすることで、パワフルかつ高精度に動かすことが可能になったという。「2つのモーターで軸を押さえつけながら回転させることでギアのバックラッシュがゼロになる。ガタつきがなくなり、高精度の制御が行える」。(fuRoの古田貴之所長)。

 車体には、下向きと横向きに距離センサーが合計13個、また周囲の障害物を検出するために2個のレーザー測域センサーを備え、障害物のある方向と距離を全方位で検出できる。もちろん各関節には角度計があり、さらに車体の姿勢を検出するための3軸傾斜センサーも装備した。そのほかのスペックは下表の通り。

名称 Halluc II
全長 805ミリ
重量 20キログラム
自由度 40(関節数:32、タイヤ数:8)
搭載センサー 関節角度計×48、ホイール制御用エンコーダー×8、3軸傾斜センサー×1、距離センサー×13、レーザー測域センサー×2
そのほかの装備 無線LAN、広域無線カメラ
備考 乗り越え可能な段差高さ:125ミリ、最大登坂角度:40度

 古田所長は、「Halluc II」を開発した理由を「2つの環境変化を見据えた先行開発」と説明する。「環境と共存できる未来の乗り物として、(自然破壊を伴う)舗装道路がなくても移動できる手段が求められる。一方、技術の進歩と普及に伴い、モーターや高性能の制御用コンピューターなどが入手しやすくなる。そのときのためにロボット技術を先行して開発した」。当面は救急車やレスキューなどの特殊車両、あるいは物流用、福祉車両への応用を目指す。

photo 専用コックピット「Hull」(ハル)

 なお、発表会では見ることができなかったが、Halluc IIには専用のコックピット「Hull」(ハル)が用意されている。Hullは2つのジョイスティックと半自律システムを備えた「人機一体」の操縦システム。Halluc IIとともに、8月1日から東京・お台場にある「日本科学未来館」で一般公開される予定だ。

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