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プラズマと液晶(1)――「KURO」のインパクト本田雅一のTV Style

» 2007年09月07日 10時23分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 前回までは主にサイズを選ぶ上でのポイントを紹介してきたが、今回はパイオニア「KURO」の発売が話題のプラズマテレビについて、この方式の長所や液晶パネルと比較する際のポイントを紹介していくことにしたい。

映像マニアが好むディスプレイ

photophoto 8月の「KURO」発表会の様子。右はフルハイビジョン60V型「PDP-6010HD」(10月上旬発売予定、99万9000円)

 プラズマ方式のディスプレイの歴史は意外に浅く、カラー化されたのは1992年のことだ。これは21インチサイズで、大型パネルとなると1997年の42型を待たなければならなかった(いずれも富士通)。その後、同じく1997年にパイオニアが初の50インチハイビジョン(XGA)パネルを実用化した。わずか10年前のことだ。

 プラズマ方式のディスプレイは大型化が液晶パネルよりも容易だったため、当初から大型パネルを前提に商品化が進められた。今や液晶パネルも50インチを超えるものが少なくないが、それでも60インチ以上となると、やはりプラズマ方式の方がコストを始め、さまざまな面で有利といわれている。くわえて蛍光体を発光させるプラズマ方式は、画素が小さすぎると輝度を高くできないため、より大きなサイズの方が作りやすいという都合もある。

 若い技術だけに黎明期の記憶も鮮明だ。よって、かつてのプラズマ方式でいわれていた弱点が、未だに囁かれ続けている。しかし液晶パネルが改良されてきたのと同様に、プラズマ方式も改良され続けており、今では映像マニア、とくに映画マニアの好むディスプレイ方式としての地位を確立した。

 たとえば初期のプラズマ方式明るい部屋でのコントラストの低さ、疑似輪郭(よく言われる階調不足によるものではなく、視線移動時に階調が減って輪郭が出る現象)、階調不足、焼き付き、高精細化に向かない、消費電力が大きいなど、さまざまな弱点が指摘されていた。しかし、これらの問題に取り組んできた結果、パネルメーカーごとの差はあるものの、かなりの面で解消されてきている。

 むしろ色純度の高さや応答速度、動画解像度の高さ、視野角の広さといった利点は、液晶方式を明確に超えており、発色の均一性やANSIコントラストの高さ(隣接画素のコントラストの高さ)といったプラズマ方式の利点に加え、近年の度重なる改良で暗部階調表現の素直さや暗室コントラストの高まりなどにより、とくに照明をやや落とした部屋で映画などのプレミアム映像を鑑賞するディスプレイとして確たる地位を築いている。

 また、消費電力の面でも現在は液晶方式よりも低い。プラズマ方式は画素が小さくなりすぎると発光効率が低くなるが、ある程度以上の大きさならば、すでに十分な発光効率がある。プラズマ方式は画素の明るさによって消費電力が変化する(暗い画素は消費電力が少ない)が、液晶方式では常にバックライトが光り続けている必要があるからだ。このため、暗めのシーンが多い映画はもちろん、平均的な動画像ならばプラズマ方式の方が平均消費電力が低くなる場合が多い。

 もちろん、その一方で液晶テレビには液晶方式なりの利点があり、決してプラズマが万能というわけではない。かといって、プラズマと液晶の方式ごとの利点と欠点をひとつひとつ説明しても、なかなか自分に合ったディスプレイ方式を選べるものではなかろう。

 そこでこれまでは単純に、フルHDで50インチ以上、WXGA解像度で42インチ以上という条件ならば、画質重視でプレミアム映像を見るためのディスプレイが欲しいという人にはプラズマテレビを勧めてきた。

 逆に一般的なテレビ映像、とくに平均的に明るい場面が中心のスタジオ撮りのテレビ番組が中心、あるいは情報の窓口としてテレビを見るという人には、やや小さめのサイズがいいという人には液晶テレビを勧めている。

photo 1月の「2007 International CES」に展示された60インチプラズマ。KUROの試作品にあたる

 実は今年の年末には、こうした単純化した勧め方も変えなければならないと思うほど、液晶テレビの画質も向上してきていたのだが、先日の「KURO」の発表で、またもや考えを改めなければならなくなってきている。

 商品としてのブラウン管が廃れて以降、画質面では何かの妥協を強いられてきたテレビだが、やっと本気で映像を楽しめるディスプレイが登場したと感じたからだ。KUROは、昨年のCEATECで次世代プラズマとして公開された技術だが、1月のInternational CESでは年内の国内発売はないとされていたものが、発売になるというのである。その映像のインパクトは“プラズマ”の概念を大きく変えるほどのものだった。

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