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世界初の有機ELテレビ、ソニー「XEL-1」(詳報)(1/2 ページ)

» 2007年10月01日 16時42分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 ソニーから発表された世界初の有機ELテレビ「XEL-1」。ここでは注目の有機ELパネルを中心に細部を見てみよう。

photo 「XEL-1」

 有機ELディスプレイとは、電流を流すと発光する有機材料を用いたディスプレイ方式。同社では1994年に研究を開始し、2004年にはPDA「CLIE」の「PEG-VZ90」に3.8型カラー有機ELディスプレイを搭載。その後も研究開発を継続してきた。新製品に搭載されている「ORGANIC PANEL」(オーガニックパネル)は小型ディスプレイの開発・製造で培われてきた技術やノウハウが投入されている。

photo 「ORGANIC PANAL」を手にする白石氏

 開発の指揮を執った同社テレビ事業本部 E事業開発部 部長の白石由人氏は、100万:1以上という「コントラスト」、高ピーク輝度を持つ「輝度」、低階調側でも再現性の高い「色再現性」、数マイクロ秒オーダーという「動画性能」の4つをパネルのポイントとして挙げる。

 それらの実現には多種多様な技術が投入されているが、注目なのは「Super Top Emission」(STE)と名づけられている技術だ。通常の有機ELパネルはTFT基板側から光を取り出すため、電極や配線のスキマを通さざるを得ず、開口率が制限されしまう。しかし、STEを用いることで光が通過するのはカソード(半透過膜)とガラス基板のみとなり、高い輝度や高い色再現性を実現できる。

 数値で表現すると輝度は600カンデラ/平方メートルとなるが、ピーク輝度は高く、太陽光に照らされたバイクのエンジンや、暗闇で輝くネオンサインなどを美しく描写する。また、色再現性についても数値で言えばNTSC比110%だが、低階調(低入力レベル)時の再現範囲が高いため、液晶などに比べる高い質感を映像に持たせることが可能になっている。

photophotophoto 「Super Top Emission」(STE)の概略(左)、実装によって実現した高輝度(中)/広色再現性(右)

 高画質と同様なインパクトを与えるのが、「3ミリ」(最薄部)という薄さだ。構造上バックライトが不要なこともこの薄さの実現に大きく寄与しているが、本製品の「ORGANIC PANEL」は数百ナノの有機層を0.7ミリのガラス2枚でサンドイッチする構造となっており、同構造はこれまで同社の有機ELディスプレイ製造で培われてきた製造ノウハウがあってこそ実現できたという。

photophoto 「ORGANIC PANAL」の薄さを説明する白石氏(左)

 XEL-1の消費電力は45ワット(待機時は0.84ワット)。バックライト不要という構造上の寄与もあるが、有機材料や駆動回路の新開発などによって、パネル部分の消費電力を同社20V型液晶に比較すると約40%削減している。なお、スペックシートに「視野角」の表記がないのは、構造上どの角度から見ても階調変化が起こらないため。実質的な視野角はほぼ180度といえる。

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