新世代の薄型テレビに沸く「CEATEC JAPAN 2007」。大手メーカーが軒を連ねる9〜11ホールは連日の盛況だが、実は部材中心の6ホールにも注目のブースがある。FED(nano-Spindt Field Emission Display)の実用化を目指すエフ・イー・テクノロジーズだ。
FEDは、電子を蛍光体にぶつけて発光させるというブラウン管に近い自発光方式で、かつインパルス駆動による輪郭ボヤケのない動画表現でしられる。ほかにも広い視野角や優れた黒の再現性といった特徴があり、薄型ながら“進化したブラウン管画質”などと呼ばれる。
また同社ではブラウン管用のSMPTE/EBU蛍光体を改良した残光特性の短い蛍光体を採用し、残光ボヤケを排除しつつ映像の制作現場と同じ色域を正確に表示することを可能にした。現在はマスターモニター用途を中心に事業化の検討を進めている段階だ(→詳細記事)。
同社のブースには、19.2型を中心とするFEDの試作機が並んでいる。その中でも注目は8月に技術発表した240Hz駆動のFEDだろう。直視型フラットパネルディスプレイとしては「世界初」(同社)だ。
試作機も画面サイズは19.2インチで、解像度は1280×720ピクセル。輝度は400カンデラ、コントラスト比は2万:1以上というスペック。パネルの駆動回路はもちろん、240MHz化にともなう情報量の増大に対応するため入力インタフェースも新規に開発した。
デモンストレーション映像は、わざわざソニー・コンピュータに頼んで制作してもらったという240Hz版の「グランツーリスモ」。新規にレンダリングされた毎秒240フレームの高精細動画に、来場者からは「これCG? 実写かと思った」という驚きの声が上がっていた。また、その隣では24p入力によるBlu-ray Discの映画コンテンツも披露。24Hzから240Hzに至る「フレームレートフリー」をアピールした。
もちろん、液晶テレビの倍速駆動のような中間フレーム生成や黒挿入といった機能は実装していないため、通常のテレビ映像などを表示するには完全なオーバースペック。しかし同社では、240Hz駆動によってマスターモニター以外の市場も開拓できるという。
たとえば、前述のグランツーリスモのような高速表示のプレミアムなゲーム筐体。あるいは高画質の立体テレビなど。「視差を利用する立体映像の場合、左右の目でそれぞれの画を見るためにフレームレートが半分になってしまい、目が疲れやすい。しかし通常(60Hz)の4倍にあたる240Hz表示なら、片方の目で見る映像は毎秒120フレーム。綺麗で目が疲れない立体映像になる」。
AVファンとしては特定用途向けのディスプレイより民生機の展開を期待したいところだが、「パートナーと需要次第」(同社)というスタンスは変わらない。「2008年の半ばまでに具体的なビジネスのシナリオを出し、出資を募る。今はそれに至る道筋をつけている段階だ」(同社)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR