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“首から上”をマッサージするロボ、早稲田大学らが開発

» 2007年10月09日 20時29分 公開
[山田祐介,ITmedia]

 早稲田大学、朝日大学歯学部、朝日レントゲン工業は10月9日、顔や顎のマッサージを行なう“オーラル・リハビリテーション・ロボット”「WAO-1」を発表した。

photo WAO-1の1号機

 近年、高齢化やストレス社会などの影響で顎顔面(口と顔の周囲)の疾患が増えているという。口を開くと顎が痛くなったり音が鳴る「顎関節症」や、唾液が慢性的に不足する「口腔乾燥症」などはその代表的な例。有効な治療方法としてマッサージ療法があるが、熟練した医師以外が適切に行なうことは難しく、治療を受けられる医療施設も少ない。

photo 高西淳夫教授

 こうした現状を受け誕生したのがWAO-1だ。開発は早稲田大学・高西淳夫研究室が中心となり進めた。同研究室は、1990年代から歯科医療用のロボットを病院や企業、他大学などと連携して研究・開発してきた。WAO-1の開発は2006年4月より着手し、“熟練した医師のマッサージを忠実に再現する”ロボットとして送り出した。今後、朝日大学医学部と協力し臨床試験を行う計画で、2009年度には実際に医療機器として病院に導入する目標を立てている。また、エステ施設などの美容機器として技術を応用することも可能だという。

 WAO-1はマッサージを行なうロボットアームに、フレームのひずみを感知することで加わった力の強さや方向を正確に検知できる「6軸力覚センサ」を搭載している。「従来の一般的なマッサージ機器は電流を制限することで必要以上の力が加わらないようにするなど比較的ラフな制御しかできなかったが、WAO-1は“横方向”や“ねじれ”といった複雑な力の加わり方も検出することができる」と、高西淳夫教授は語る。

photophoto アームの青い部分にセンサーが入っている。先端に付けられた指の役目を果たす「プランジャ」には様々な種類がある。写真は半球型のもの(左)。4つの回転軸と2つのスライド軸を備え、アームを動かす(右)

 センサーの情報を独自のアルゴリズムで処理することで、アームにあたかもバネやダンパーが付いているかのような柔らかい制御が可能になり、“首より上”のデリケートな部位のマッサージを安全に行なえるという。アーム先端には指の役目を果たす「プランジャ」が取り付けられており、ボール型やローラー型などさまざまな種類のものを使い分けることで、適切な治療を行なう。

photophotophoto マッサージのデモンストレーションでは、耳下線を刺激することで唾液の量を増やすマッサージが行なわれた。使用感は「恐怖感もなく、とてもきもちいい」とのこと。作動部が視界に入らないことが、安心感を与える要因だという
photo WAO-1の2号機

 WAO-1の2号機は朝日レントゲン工業によって9月末に完成し、3号機も10月中に完成する予定。歯科用のレントゲン機器を中心に製造してきた同社だが、将来的にはWAO-1と同社の検査機器を連携させることにより、より効果的な治療ができる事業を展開していくという。

 家庭用のマッサージチェアなどへの応用も技術的には可能だが、現時点ではコストの問題で事業化は難しいという。WAO-1の1号機は、部材費だけで約1000万円の費用がかかっている。しかし将来的には、患者の自宅に設置できるようにしたいと高西氏は考えており、今後よりコンパクトで低コストなオーラル・リハビリテーション・ロボットの開発を検討していくという。

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