オリンパスの未来創造研究所が試作機として開発した「モバイル Eye-Trek―慧眼―」は、視界を隠すことなく映像を表示する眼鏡型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)だ。
この試作機には従来のHMDのようにバッテリーや映像出力と接続するコードがない。眼鏡のつるの部分に無線モジュールとバッテリーを内蔵することで、完全ワイヤレス化を実現したのが大きな特徴。映像は眼鏡の右側に設置された「光学バー」からレンズを介して表示される。
無線通信には、省電力性に優れた独自の2.4GHz帯通信方式を採用し、専用アダプタを取り付けたPCやスマートフォンから送られてくる映像を表示することができる。投影部の素子は11.3万画素。映像は50センチ先の3.8インチ画面に相当する、比較的小さなものだ。
Eye-Trekというブランド名は、同社が1998年から2002年まで生産していた家庭用HMDに付けられていたもの。気軽に大画面を楽しめるAV機器として販売されていたが、今回のHMDは、そのスペックからもわかる通り、これまでの製品とは開発の意図が異なる。テーマは「インスパイア型ユビキタス」だ。
「これまでのユビキタスは“いつでもどこでも便利で快適”がテーマだが、それだけで人の生活は豊かになるのだろうかという疑問があった」と、開発メンバーである同研究所・上席研究員の龍田成示氏は話す。便利さに依存する社会には、人の気力や活力が失われてしまう“負の面”もある。インスパイア型ユビキタスは、ただ便利なだけでなく、ユーザーが能動的に行動したくなるような“気づき”情報を提供することで、生活をより活発で豊かなものにすることが目的だ。
インスパイア型ユビキタスでは、体に取り付けたセンサーやGPSのデータから、ユーザーの行動や健康・心理状態などを予測し、それにあわせた“気づき”情報を提供する。例えば、運動不足を解消したくても、ついエスカレーターを使ってしまう人に、階段のある位置をタイミングよく提示して気づかせるといった具合だ。その情報を表示するディスプレイとして、より気軽に身につけられるHMDが必要だった。
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