ITmedia NEWS >

平成生まれの「なまず」は地震予知のエキスパートになってくれるだろうか!?プロフェッサー JOEの「Gadget・ガジェット・がじぇっと!」(1/3 ページ)

» 2007年10月25日 13時18分 公開
[竹村譲,ITmedia]

 死語になってしまっているかもしれないが、「地震・雷・火事・おやじ」という言葉がある。人が恐れおののくこの世のエレメントを列挙したモノだが、時代の変化か、最後に位置する「おやじ」のパワーと説得力が少し不足気味だ。定かでは無いが、実は「おやじ」ではなく、「山嵐」(やまじ:台風)をユーモアの分かる人が無理矢理「おやじ」にこじつけたという説もあるようだ。

 何れにせよ、人が最も恐れおののく地球上の災害クイーン(キング?)が、筆頭に置かれている「地震」であることは確かなようだ。地震が来ない方が良いことは万人の一致するところだが、地球自身が生きて健全に活動している限り、避けようがない活動であることもまた事実。「地震予知」は大気汚染や多くの難病と並んで、我々人間が英知を集めてあたるべき重要な課題なのだろう。

 しかし、最新のテクノロジーをもってしても、その実態が捕まえ切れない筆頭も「地震」だろう。もし、最後が「山嵐」でなく「おやじ」なら、実態を捕まえ切れないという観点では「地震」と「おやじ」はいい勝負だろうが。古代から人類は地震を研究し、その予知には多くの知的エネルギーを投入してきたはずだが、残念ながら21世紀の現代でも明快な答えは見つけられていない。

 地震に限らず、災害は「予知する」「対応する」「防ぐ」「回避する」など、いろいろな対応策が言葉の上では思いつく。雷にも、火事にも、おやじにもそれなりの方策や対応は考えられるが、地震に対しては残念ながらいずれも説得力に欠けるのが現実だ。ブームの地震予知に関しても、世界中に多くの理論が存在し、共通点といえば「自分たちの理論は正しい」と言い張ることくらいだろう。事後に「予想が当たった」という話はよく聞くが、すべて一勝一敗一引き分けで、決して我々の命を預けても良いとは考えにくい。

 そんな余り見込みのない「地震予知」に疲れたのか、昨今脚光を浴びているモノに「緊急地震速報」がある。読者も既知と思うが、これは実際に地震が発生した時点で、震源地から離れた地域へ、今から何秒後に地震が来るかを知らせる仕組みだ。

 物理や地学の授業で習ったように地震の揺れには小さなP波と大きなS波という2つの波(揺れ)があり、それぞれ伝搬速度が異なる。地震の発生とともに、秒速7キロの速いP波が震源地を中心に放射状に広がり、同時に秒速4キロの遅いS波がP波を追いかけるように伝搬する。日本全国の地表に埋め込まれた約1000個の地震計が震源を特定し、P波とS波の速度差を利用し、震源からある程度離れた地域に対して、何秒後に大きな揺れ(S波)が到来するかの予測を計算し発表することができる仕組みだ。

photo 3Softジャパンの製造する「デジタルなまず」

 この「緊急地震速報」はテレビやラジオ、防災行政無線などのほか、気象業務支援センターを経由してリアルタイムに専用クライアント機器である「デジタルなまず」へ情報が配信される。病院や公共施設、学校、託児所など、多くの人の集まる場所に設置して地震の大きな揺れが来るまでの猶予時間(秒)を音声カウントダウンすることで、最低限の対応と心構えができることの意義は大きい。しかし、いつの時代もテクノロジーは万全ではないので、「デジタルなまず」が100%完璧とは考えにくい。カウントダウンがパニックを引き起こさない訓練も必要だろう。

 もちろん「デジタルなまず」など専用機器以外にも「緊急地震速報」を配信することは可能であり、その筆頭候補は自宅や会社に設置されたパソコンだ。既にOCNなどプロバイダーの中にはこれらのサービスを発表しているところもあるが、当然、有料サービスとなり、現在の月額経費に追加のサービスとなる。光ファイバーブロードバンドのユーザーは机の下でセーフ、ADSLのユーザーは本棚に積み上げた文庫本が頭を直撃することが無いように祈りたい。

関連キーワード

災害


       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.