通常は「紙」に印刷される情報を電子デバイスで読む「電子書籍」のコンセプトは、今に始まった話ではない。1993年に登場したアドビシステムズのPDFは、当初から電子書籍に適していると説明されていたし、カラー液晶搭載のPDAが流通し始めた頃も、すわ電子書籍時代到来か、といった声が聞こえていた。そして現在、パピレスやTimebook Townなど専門店も増え、電子書籍を読むことは特別なことではなくなっている。
国内における電子書籍の市場規模を見てみよう。約3年前のこちらの記事(→電子書籍の市場規模は前年比80%増の18億円に)では、2004年3月時点における国内の市場規模が約18億円、2010年には1102億円に拡大するというインプレスR&Dの予測値を確認できる。同じインプレスR&Dが先日発表したニュースリリースによれば、2007年3月における市場規模は約182億円と3年前の約10倍に増加、市場は急拡大しているといえる。
ここで注目したいのがその内訳。機器別に見ると、ケータイ向けが約112億円(全体の62%)と、PCやPDA向けをはるかに上回っている。コンテンツ別では、コミックが約106億円(全体の58%)と圧倒的だ。つまり、ここ日本ではケータイが電子書籍端末として認知され、コミックという有力なコンテンツにより市場が牽引されているというわけだ。
米Amazonが発売した「Kindle」(→Amazon、ワイヤレス機能つき電子書籍リーダー「Kindle」発売)は、縦型ボディに6インチのモノクロ液晶と、3Gデータ通信方式のEV-DOに対応した電子書籍端末。Amazon.comの「Kindle Store」には、すでに9万冊を超えるコンテンツが用意されているほか、通信機能を利用した新聞/雑誌の自動配信サービスも行われるそうだ。
Kindleのスペックを見て、既視感を覚えた人もいることだろう。そう、SONYが2004年に発売した電子書籍端末「LIBRIe」とよく似ている(→“貸本”は復活するか? ソニーの読書専用端末LIBRIeと対応サイトが発表)。EV-DO対応の通信機能こそないものの、縦型のボディに6インチ/4階調のモノクロ液晶、600×800ピクセルという解像度など、共通する部分は多い。だからこそ、ハードとしてのKindleのインパクトはそれほど大きいとは思えない。
さらに日本では、ニュース記事など最新情報を取得するツールとしてケータイが普及している。Kindleが日本市場に投入されるにしても、縦書き対応などローカライズが不可欠なうえ、画面がモノクロでケータイより大柄とくれば、コミックを好む消費者への訴求効果も少ないように思える。米国仕様のまま日本市場に投入される可能性は、かなり低いのではないだろうか。
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