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“貸本”は復活するか? ソニーの読書専用端末LIBRIeと対応サイトが発表

» 2004年03月24日 17時26分 公開
[大出裕之,ITmedia]

 ソニーは3月24日、米E INK社のマイクロカプセル型電気泳動方式電子ペーパーを採用した読書専用端末「LIBRIe EBR-1000EP」を発表した。重量は電池とソフトカバー込みで約300グラム。内蔵メモリで20冊分、別途メモリースティックを使用することで最大500冊分のデータを持ち運べる。単4形アルカリ乾電池4本で、約1万ページ(1冊200ページとして500冊分)分持続する。実売予想価格は4万円前後。

読書専用端末LIBRIe「EBR-1000EP」

 ソニーマーケティングの宮下次衛社長は「現在電子辞書分野が非常に成長を遂げている。年間300万台を出荷し、約800億円の市場だ。電子書籍も、2007年度くらいで800億円程度の市場を形成したい。LIBRIeは当初月産5000台を見込んでいる」と語った。

 ソニーの宇喜多義敬e-Bookビジネス推進長は「LIBRIeの特徴は、電源を抜いても表示が消えず、視野角180度で解像度170ppiの反射タイプの電子ペーパー。現在の新聞紙程度のクオリティまで来た」と胸を張る。

 LIBRIeが対応する電子書籍規格は、ソニーが開発した「BBeB」(Broad Band e-Book)。同規格は「BBeB Book」とBBeB Dictionary」の2フォーマットが用意される。一般的な電子書籍用の「Book」は、ハイパーリンクを使った画面展開や、朗読音声の再生といったデジタルならではの表現が可能だ。中間ファイルフォーマットとしてXMLを使用してコンテンツ作成時の拡張性を高め、出版社が持つ豊富なコンテンツのマルチユース化を容易にした。著作権保護技術もソニーの「OpenMG」を採用している。

 電子辞書メーカーのカシオ計算機とセイコーインスツルメンツも、同様にBBeB対応の読書端末を発売する計画だ。大日本印刷、凸版印刷、図書印刷、ボイジャーなどもXMLコンバータを発表し、既存コンテンツのリユースが図れるようにしていく。

 ソニーと出版社が出資するパブリッシングリンク社長に就任した筑摩書房の松田哲夫専務は「これまで出版各社は実験的な意味合いも含め、“出版文化のため”として絶版本などの電子書籍化に取り組んできた。だが多くの消費者にとって必要とされているのは生きのいいコンテンツ。こういったデバイスと技術とコンテンツがそろうことで、ようやく電子出版が本格的に動き出すと思う」と語った。

 パブリッシングリンクは、電子書籍配信ポータル「Timebook Town(http://www.timebooktown.jp/:4月1日午前10時オープン予定)」を運営する。ダウンロードしたコンテンツは、LIBRIeのほかPCなど4台までの機器で、60日の期限付きで読むことができる。

利用の流れ

 サービスは、1冊ずつ(1冊当たり315円〜)コンテンツを読むことができる「Timebook Library」と、月額1050円程度の会費を払えば特定ジャンルの5冊までダウンロードできる「Timebook Club」とがある。基本会費として別途月額210円が必要。決済はクレジットカードで行う。

 Timebook Clubは当初の2カ月でミステリー、SF、ファンタジー、純文学、恋愛、歴史、料理、実用、官能、語学学習などの各分野合計約1000コンテンツをラインアップする予定。シニア向けやコミック専門コースも準備中だ。

 “貸本”をコンセプトにした今回のサービスインだが、将来的には端末やコンテンツのカラー対応、書籍だけでなく雑誌などの電子化、期間限定だけでなく買い取り式の販売形態などさまざまな可能性を予感させる。まずは第一歩を踏み出したと言えるが、ユーザーの視点から言えばこれ以上の端末規格・コンテンツ規格争いは願い下げだ。その意味で、松下電器産業などが取り組む「Σブック」など、他規格との互換性なども特に期待したいところだ。

左よりソニーマーケティングの宮下氏、鹿島茂氏、松浦理英子氏、石田衣良氏(この3氏はTimebook Townでオリジナル書き下ろしを行う)、パブリッシングリンクの松田氏、ソニーの宇喜多氏

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