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自宅で「焼く」DVDダウンロードは夏に花開く?

» 2007年11月28日 05時18分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 自宅で映画をダウンロードしてDVDに焼く。「DVD on Demand」あるいは「Download Video」と呼ばれるサービスが2008年夏に増えるかもしれない。ソニック・ソルーションズは11月27日、同社の「Qflix」技術を報道関係者に説明し、国内でも複数の企業と交渉を進めていることを明らかにした(→発表記事)。

 ダウンロードした映像をDVDに焼くサービスとしては、既にKDDIの「DVD Burning」(→関連記事)が存在するが、KDDIはコピー防止技術にCPRMを採用したのに対し、QflixはCSSを使用する点が異なる。このCSS方式のDVDオンデマンドサービスが2008年7月1日に日本でも“解禁”されるのだ。

 ソニックが提供するQflixは、DVD on Demandに必要なメディアやドライブ、ソフト、そしてセキュリティインフラ(CSS認証)といった要素を一括提供するサービス事業者向けのソリューション。Qflix対応サービスでは、DVD販売やレンタル開始と同時期にダウンロードサービスも開始できるうえ、販売店には並ばない“絶版DVD”なども入手できるのがメリット。しかもハリウッドなどのコンテンツ提供者は、新しいウィンドウを確保しつつ、プレスDVDの販売に比べて最大6ドルのコスト削減が可能になるという。

photophoto QflixではPCのほかにキオスク端末によるサービスも検討されている(左)。同社が提供する書き込みソフト「Roxio Venue」の画面(右)。カタログ的に表示されるコンテンツ一覧から選択するだけでダウンロード開始。右下のBurnボタンで簡単にDVD-Rへ書き込める

 「ソニックはDVDのオーサリングツールとしてスタジオ用途でも高いシェア(9割)を持っている。たとえば既存オーサリングツールのアドオンツールとして“DVDオンデマンド向けのエンコーダ”を提供すれば、対応コンテンツが急速に増える可能性がある」(同社)。

 利用手順もDVD Burningとは少し違う。たとえば書き込みメディアにはCCSのキーをプリバーン(あらかじめ書き込む)した専用のDVD-Rメディアを使い、ユーザーはPCでダウンロードしたファイルを専用ソフトでDVD-Rに焼く。つまりDVDレコーダーなど民生機を視野に入れたDVD Burningに対し、ソニックのQflixはPCが前提。DVDドライブも専用のものが必要となるため、同社ではまずPCメーカー向けのOEMという形でQflixの採用を呼びかける方針だ。

photophoto 発表会の会場には、三菱化学製のCSS対応DVD-Rとパイオニア製の専用DVDドライブを参考展示していた。CSS対応DVD-Rは「既存のDVD-Rとあまり変わらない価格」を目指すという

 焼いたDVD-Rは、既存のDVDプレーヤーやゲーム機などで再生可能。同社では、全世界に普及しているDVDプレーヤーの95%で互換性を確保できるとしている。

 ただ、気になるのは日本特有の市場性だ。

DVDレコーダーで再生できない?

 たとえばダウンロード手段を考えたとき、PCは当然として、日本ではDVDレコーダーなど民生機の存在を無視することはできない。また再生環境についても、前述の95%という数字はあくまで「DVDプレーヤー」の話であり、国内で普及しているDVDレコーダーは別だ。既存製品の中にはCCSの信号を検知するとDVD-ROMと判断してしまうものが存在し、再生できない可能性があるという。この点は、ファームウェアアップデートなどの対策が求められるだろう。

 画質についても現状では不明瞭な部分が多い。ソニックでは基本的に「DVDと同等の品質」を目指すとしているが、ハリウッドを中心とするコンテンツプロバイダーでは、日本ほどブロードバンドインフラが発展していない米国の市場性を考慮し、ファイル容量を1Gバイト程度に抑えることを検討しているという。これを補うため、「書き込みソフトでアップコンバートをかけ、クオリティを上げてからDVD-Rに書き込む」という手段も提案されているが、いかんせん元になるデータ量がセルDVDの4分の1以下では、特典映像などを省いたとしても画質的に疑問符が残る。

 つまりダウンロードから再生まで、すべてが米国を前提とした仕様になっていて、日本まで手が回っていないというのが現状のようだ。仮にそのまま国内へ持ちこんだ場合、市場が限られてしまう可能性は捨てきれない。


 目的のDVDが販売店の店頭で見つからなかったときは空しいものだ。そうしたユーザーの不満を解消し、コンテンツビジネスにも大きな恩恵を与える可能性を秘めたDVD on Demandは、間違いなく注目の新サービスといえる。しかし、市場の特性に合わないサービスが増えても実際のメリットは少ないため、どこまで日本の市場性を考慮した運用スタイルを盛り込めるかが課題になる。まずはソニックの“お手並み拝見”といったところか。

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