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ライカの写りをライブビューで味わう――松下電器産業「LUMIX DMC-L10」デジ一眼レビュー(1/4 ページ)

» 2007年12月03日 12時20分 公開
[永山昌克,ITmedia]

 この秋〜冬は、各社から力のこもった本格デジタル一眼レフ機が目白押しで、どれを選ぼうか悩んでいる人も少なくないはず。レンズマウントに互換性がほとんどない一眼レフ機の場合、昔は、あるメーカーのレンズをいったん揃えたら、その後他社マウントに乗り換えるにはそれなりの決断が必要だった。だが最近は、より高性能なデジタル専用の新レンズが次々と登場したり、ヤフオクなどでの売り買いが手軽になった背景もあり、昔ほど1つのマウントにこだわる理由が薄くなっている気がする。

 つまり、他社製品に乗り換えてもいいと思えるくらいの力作ボディが続々と登場しているのだ。そんな激戦の中、個人的には当初ノーマークだった松下電器産業から、ダークホース的存在といえる注目機「LUMIX DMC-L10」(以下L10)が登場した。

photo 松下電器産業「LUMIX DMC-L10」
photo レンズマウントはフォーサーズマウント

デジタル一眼初のコントラストAF

 L10に惹かれるいちばんのポイントは、最近増えているデジタル一眼のライブビュー機能の中でも、今のところ最も実用的なライブビューを搭載したこと。知っている人には説明不要だが、まず今のライブビュー事情を簡単に解説しておこう。ライブビューとは、リアルタイムの映像を液晶モニターに表示する機能のこと。コンパクトデジカメでは当たり前だが、一眼レフ機はその構造上、何らかの仕掛けがないとライブビューができない。

photo 自由なアングルで撮影できる可動式モニター。例えば人物を撮る際、撮られる相手に威圧感を与えないメリットがある

 仕掛けというのは、一時的に内部のミラーやシャッターを開き、レンズからの光を撮像素子に当てること。ただし、ミラーアップした状態ではAFセンサー側には光が届かなくなり、ライブビュー中はAFが作動しない。そこで、多くの他社製品では、ライブビュー中にAFボタンを押して一時的にミラーダウンしAFを作動させたりしている。このとき作動するのは、一眼レフ機ならではの、AF専用センサーによる「位相差検出AF」だ。位相差検出AFは高速なことが利点だが、ライブビュー表示が一時中断し、ミラーの上下によってパタパタと駆動音が鳴り、タイムラグも少なくないことがデメリットである。

photo ライブビューを表示した状態。液晶の視野角は狭いが、屋外での視認性は上々

 L10では、これまでと同じ位相差検出AFを選べる一方、デジタル一眼では世界で初めて、ライブビュー中の「コントラストAF」を実現した。コントラストAFとは、コンパクトデジカメに使われているAFシステムであり、撮像面のコントラストを判断してピントを合わせる仕組み。シャッターボタンの半押しよってAFが作動し、パタパタ音なしでスムーズに合焦する。

photo コントラストAFでは、AF測距点を11点から選べる

 厳密にいうと、合焦後にシャッターボタンを全押しして撮影を行う際にはミラーが上下するので、L10のライブビューでもパタパタした動作や音はある。コンパクト機とまったく同じAFや撮影感覚とはいえない。ただそれでも、今はまだ過渡期にあるデジタル一眼のライブビュー機能の中では、(ライブビュー専用CCDを備えたオリンパスの従来機「E-330」を除けば、)L10のライブビューが最も快適だと感じる。

 加えて、L10のライブビュー撮影では、顔認識AFやデジタルズーム、EX光学ズームを利用でき、被写体の動きに応じて感度を自動アップする「インテリジェントISO」機能にも対応する。デジタル一眼で、デジタルズームやEX光学ズームを使いたいユーザーがどれほどいるかは不明だが、顔認識AFやインテリジェントISOについてはシーンによっては役立つだろう。

 こうしたライブビュー時のコントラストAFや顔認識AFを、他社に先駆けて実現できた理由は、それに対応した専用レンズを作ったこと。逆にいうと、現状ではキット付属の標準ズーム「ライカD VARIO-ELMAR 14-50mm/F3.8-5.6 ASPH./MEGA O.I.S.」と12月発売の高倍率ズーム「ライカD VARIO-ELMAR 14-150mm/F3.5-5.6 ASPH./MEGA O.I.S.」の2本でしか、コントラストAFや顔認識AFは作動しない。それ以外のフォーサーズレンズでは、通常の位相差検出AFによるライブビューとなる。

photo キットレンズ「ライカD VARIO-ELMAR 14-50mm/F3.8-5.6 ASPH./MEGA O.I.S.」を装着。手ブレ補正はレンズ側での対応となる

 従来の松下製ライカレンズのユーザーにとっては悔しい思いだが、まだレンズ資産が少ない松下だからこそレンズ側の思い切った改良ができたともいえる。他社も含め、デジタルならではの新機能や利便性を追求するなら、レンズ側のハード的な仕様変更は避けられない。冒頭で述べたように、これからの時代はレンズを資産と考えないほうが賢明だろう。

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