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ソニーの有機ELテレビ「XEL-1」、新世代画質の秘密(1/3 ページ)

» 2007年12月17日 13時41分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 ソニーが発売した有機ELテレビ「XEL-1」(→レビュー記事)は、次世代テレビの幕開けを告げるエポックメイキングな製品だ。既に実物を見た人なら、その薄さはもちろん、今までの薄型テレビとは異なる画質に気づくだろう。高いコントラスト性能や色再現性、フルハイビジョンの4分の1という解像度に似合わない高い精細感――。

 今回はXEL-1の画質や製品コンセプト、そして有機ELの大画面化について詳しい話を聞いた。インタビューに応じてくれたのは、同社ディスプレイデバイス開発本部基盤技術開発部 先端プロセス開発課 プロセス技術マネジャーの松尾圭介氏、そして同社テレビ事業本部商品企画部 FTV商品企画課プロダクトプランナーの酒井博史氏だ。

photo ソニー、ディスプレイデバイス開発本部基盤技術開発部 先端プロセス開発課 プロセス技術マネジャーの松尾圭介氏(左)とテレビ事業本部商品企画部 FTV商品企画課プロダクトプランナーの酒井博史氏(右)。松尾氏が手に持っているのは11インチの有機ELパネルだ

――まず、XEL-1の画質についてお話を伺いたいと思います。コントラスト比100万:1という数字が注目を浴びていますが、技術的な背景を教えてください

 まず自発光という仕組みからくるコントラスト性能が挙げられます。有機ELパネルの場合、電気を流さなければ真っ黒になる性質を持っています。真っ黒な状態ができるので、これまでとは次元の違うコントラスト性能ができる。プラズマも自発光ではありますが、予備放電で若干光っているので“完全な黒”は今のところ実現していません。ですから、液晶やプラズマと比較して非常に有利であることは間違いありません。

 ピーク輝度が高い理由は、まず上面発光(スーパートップエミッション)でしょう。そして有機ELは、流す電気の量を上げると明るく光る性質を持っています。しかも非常に素直に反応してくれる素性のいいデバイスで、輝度を出しやすい。そして、真っ黒も出る。そうした意味では、絵作りのエンジニアにとっては願ってもいない“夢のデバイス”だったわけです。

photo スーパートップエミッション(Super Top emission):従来の「ボトムエミッション方式」では、パネルの駆動回路が形成されているTFT基板側から光を取り出すため回路や配線が光を遮ってしまい、輝度が落ちる。そのデメリットを解消するため、ソニーが研究開発を進めてきたのが、TFT基板の上側から光を取り出すトップエミッション方式。これにマイクロキャビティ(微小な光共振器構造)とカラーフィルタを組み合わせて色再現性を向上させたのが「スーパートップエミッション」

 ただ、XEL-1ではコントラスト性能を100万:1と言っていますが、これは単に測定限界ということです。それ以上は測定できる機械がなかったんです。

――有機ELもRGB(光の三原色)で色を作るのは今までと同じはずですが、XEL-1では例えば花や緑、あるいは金属を表示すると“艶”のようなものを感じます。これは何故でしょう

 色に関してもコントラストとの“かけ合わせ”になると思ってください。コントラストがしっかり出ていると、奥行き感や立体感を表現できます。

 またパッと見の印象で、ずいぶんと色がしっかり出ていると思いますが、有機ELは色のレンジという意味でも有利です。例えば液晶のようにバックライトを使う方式では、輝度が低くなるとバックライトの白い光が邪魔をして色が濁ってしまいますが、有機ELは自発光方式のために低い階調でも自然な色を再現できる。この点も有機ELの色がしっかり出ている背景にあると思います。

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