ワンセグは、地上デジタル放送の帯域を使用した移動体向けテレビ放送サービス。2006年4月に本放送がスタート、携帯電話やノートPC、電子辞書など、ワンセグ対応の小型端末も急速に普及している。
ワンセグという名称は、その電波の使い方に由来する。地上デジタル放送では、チャンネル1つの帯域を13単位(セグメント)に分割、うち12をSD/HD放送に、残り1つを移動体に適した伝送方式へ割り当てている。セグメント1つを使う「ワンセグメント放送」、略してワンセグ、というわけだ。
地上デジタル放送では、セグメント1つあたり429kHzの帯域が割り当てられているが、ワンセグが使用できるビットレートは312kbps。そこに映像と音声、さらには文字放送用のデータまで含めなければならないため、データの符号化方式(コーデック)には「H.264/AVC」など高圧縮率の規格が採用されている。これが、PC用ワンセグチューナーが高いCPUスペックを要求する理由の1つだ。
ビットレートの制約ゆえに、ワンセグの画面サイズは320×240または320×180ピクセルと少し小さめ。移動体向けのテレビ放送サービスであり、居間の大型テレビでじっくり楽しむ、という利用スタイルは想定されていない。今後も携帯電話やカーナビ、PSPやニンテンドーDSといったゲーム機など、小型モニタを備えるデバイスが主要ターゲットとなるだろう。
ワンセグチューナーには、不正コピー防止用のICや暗号化プログラムが搭載されているため、視聴の際にB-CASカードは必要なく、機種によっては録画も可能だ。コピープロテクトが施されるため、録画した機器でなければ再生できないが、ニュースなど“見たら消す”的な番組の録画には便利だ。
携帯電話を中心に対応機種が急増中のワンセグだが、問題点もいくつか指摘されている。
その1つが、視聴条件の厳しさ。地下鉄や高速移動中の車では、カバーエリア内であっても安定した視聴は難しい。アナログ放送の場合、映像の品質は低下しても音声のみ聞き取り可能、といったあいまいな使い方ができたが、オール・オア・ナッシングなデジタルの場合、なにも見えずなにも聞こえないことになる。微弱な電波で再送信する、といったサービスが現れるかどうかが今後の鍵だ。
もう1つは、コンテンツに独自性がないこと。現状のワンセグ放送は、通常の地デジ番組とまったく同内容(サイマル放送)がほとんどで、携帯電話の通信機能を生かした双方向型サービスはあまり普及していない。とはいえ、新しい動きがないわけでもない。先日発表された、テレビ東京のスキー場クーポン配布(関連記事)や、テレビ新広島のワンセグ放送とSNSを連動したシステム(関連記事)といった試みは、今後のワンセグ向けコンテンツを占う試金石となるはずだ。
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