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コラム
» 2008年01月21日 08時30分 公開

そうだ、「Culture First」だ小寺信良(2/3 ページ)

[小寺信良,ITmedia]

記録文化の趨勢

 放送を記録するということは、ホビーとして古くから行なわれてきた。筆者が小学校のときは、海外短波放送を受信してベリカードを送ってもらうなんてのが流行ったし、中学高校とロックに傾倒していったのも、FM放送で流れる音楽をカセットテープに録音して、何度も繰り返し聴くことができたからだ。

 映像の録画に関しては、あいにく筆者が高校生ぐらいまで家庭にVTRがあるという家は、医者の家庭といった一部富裕層に限られていた。またVTRが加速度的に値下がりして一般家庭に普及する段階では、すでに筆者はテレビ番組制作者として仕事をしていた。家に帰ってまで、仕事で見るよりはるかに画質の悪いVHSで録画したテレビ番組を見るという習慣は、身につかなかった。

 筆者にとってテレビ番組はマスターVTRで見るものであって、オンエアというのはすでに「終わったこと」であったのだ。したがって放送を録画するという事に関していささか冷淡な視線である点が、AV評論家の皆さんと意見が合わない部分である。

 しかし、録画・録音というものがひとつの文化層を形成していることは間違いない。そしてこのような収集癖を文化レベルまで昇華できるのは、几帳面で分類、研究好きで、長期間に渉る地道な作業をいとわない日本人だけである。

 テレビ番組録画に関して言えば、今まさにホビーとして大ブレイクしてもおかしくない条件が整っている。放送の高品質化と、それを損失なく記録するメディアがある。年末商戦では多少Blu-ray Discに芽が出てきた感はあるが、本来ならば「芽が出る」程度のものではなく、年200%から300%ぐらいの成長率があってもおかしくない分野である。

 しかし現実のデジタルレコーダーは、一時期世帯普及率が100%を超えるほど売れていたVTR全盛時代に比べると、2006年度では年間300万台程度で、2005年頃をピークに年々減少を続けている。惨憺たる実績と言わなければならない。

 これはすべての罪が、次世代DVDの覇権争いにあるのではない。そもそも、(前世代の)DVDレコーダーも大して売れてないのである。これはむしろ、デジタル放送のDRMに対する不自由さによるものと考えるべきだろう。

文化を守るためにできること

 権利者団体は、「文化が経済至上主義の犠牲になっている」(関連記事)という。そしてその落としどころは、録画録音補償金だという。

 しかし補償金の分配制度は、より経済的効果を生んだであろう著作者に、多く分配される。それでは儲かる著作者と儲かってない著作者の差を、余計に拡大することになる。つまり、経済的に成功した文化は守ることができるが、そうではない文化は守ることができない、そういう制度である。

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