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れこめんどDVD:「ニュー・シネマ・パラダイス」(Blu-ray Disc)DVDレビュー(2/3 ページ)

» 2008年01月25日 09時22分 公開
[飯塚克味,ITmedia]

残念なことに映像特典はナシ

 しかし惜しい点も本ディスクには多い。まず映像特典が皆無であること。先に話題に挙げた「15周年メモリアル・コレクション」には3時間のロングバージョンに加え、監督のコメンタリーやインタビューが収録されていたが、それらは収められていない。縮小パンフや封入物は難しいにしても字幕によるトリビア集など、次世代ならではの仕様も追加してほしかった。

 また従来のDVDには入っていた日本語吹替版がなくなっていることも残念でならない。当時、本作のファンになって親になっている人も多いはず。子供に見せるには最高の内容なのに、字幕のみでは子供の成長を待たなければならない。本ディスクはアスミック作品をソニーが販売する形態になっているのだが、もしかしたら権利関係が災いした可能性も考えられる。いずれにしても本編のクオリティが高いだけに、ユーザーとしては更なる要求をしたくなってしまうのだ。

 ディスクの視聴は、プレイステーション3からヤマハのAVアンプ「DSP-AX4600」をHDMIで経由し、映像は42インチのプラズマと液晶プロジェクターによる100インチのスクリーン再生で行った。

各チャプターごとにチェック

 CH-1のメインタイトルではシチリアの波光が実に美しく、窓で揺れるカーテンの質感も実に優しい感じになっている。ここでは故郷を離れた息子に何とか連絡をつけようとしている母の姿が描かれるのだが、最初にリリースされたDVDでは自然光を生かした撮影が逆効果に思えてしまうほどシルエットの見え方がぎこちなかったのだが、Blu-ray Disc版では黒の締まりがしっかりしたことで、明暗部の差が明確になり、画面も魅力的なものに変貌した。

 「兄は帰ってこない」と言う妹も決して若くないことまで気になったくらいだ。テーブルの上のレモンは少年時代にさかのぼってまた登場するが、しっかり記憶に残る小道具として存在感を発揮している。都会にいる息子サルヴァトーレ(トト)は家に帰ってくると愛人から電話があったことを聞かされる。ベッドやランプなどから高級感が漂い、彼がただならぬ人物であることもすぐ分かるようになった。「アルフレードという人が亡くなったそうよ」と伝言を聞き、サルヴァトーレの記憶は過去に戻っていく。

高画質になって生活感も感じられるように

 CH-2では少年時代のトトの様子が描かれる。神父のもとで鈴を鳴らす仕事をしているのだが、神父の着ている袈裟の質感が実に豊かになった。ひと仕事終えた神父は、映画館に行き、これから公開される映画の検閲を始めるのだが、劇場や映写室に貼ってあるポスターの類もタイトルまで見えそうになって驚かされた。クラシック映画に強い方ならきっとタイトルを言い当てることができるだろう。

 キスシーンになると鈴を鳴らし、神父は映写室に合図するのだが、この鈴の音が教会の鐘の音と重なって場面転換する演出が見事。画面いっぱいに映し出されたシチリアの広場の情報量に圧倒される。昔のDVDではまるで塩田のように見えた広場だが、石畳が現われ日常の人々の生活感が表出してきている。家に帰ったトトはフィルムで遊ぶのだが、ここの場面も小さな1つの部屋で家族全員が生活している様子がよく見えるようになった。はがれた壁や、内職をしている母親の様子から生活が楽でないことも手に取るように分かる。

 CH-4はジャケットにも使われた自転車の二人乗りの場面。棺おけを運ぶ馬車の飾りも見事だが、道端に咲く花々にも目を奪われた。家に帰ると妹がフィルムが燃えたことで火傷を負いそうになっていて、トトは母親にこっぴどくしかられる。「パパが帰ってきたらたっぷりしかってもらう」と言う母に、トトは「パパはもう死んだんだ」と返す。「絶対帰ってくる」と言う母の言葉が胸に染み入る。

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