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れこめんどDVD:「ニュー・シネマ・パラダイス」(Blu-ray Disc)DVDレビュー(3/3 ページ)

» 2008年01月25日 09時22分 公開
[飯塚克味,ITmedia]
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 CH-8でアルフレードは大きな悲劇に見舞われる。フィルムが燃えてしまい、映画館は火事になってしまうのだ。顔面に大火傷を負って、気を失ったアルフレードを、トトが救出するのだが、画質がよくなりすぎて、本物の炎を使っているカットと、照明で火事の効果を出しているカットがはっきり分かってしまうようになった。だからといって内容の方に支障はないのだが。

 CH-9ではサッカーくじに当たったナポリ人が新しく建て直した映画館のお披露目式。建てたばかりの新築の匂いが画面を通して漂ってきそうな映像だ。客席はもちろん、映写室も何もかもが美しい。最近はシネコンばやりで、一戸建ての映画館という建物が消滅しつつあるが、こうしたシーンを見ると映画館の魅力に改めて気付かされる思いだ。今の若い映画ファンがやがて老いて、ショッピングセンターにあるシネコンが閉館する時、どんな気持ちになるのか、つい考えてしまった。

 映画はこの後、青年期のトトを描き、人生の指標ともなるべきアルフレードの名言がどんどん飛び出してくる。そして感動のラストを迎えるのだが、これは未見の方の為に伏せておいた方がいいだろう。

これぞ手元に残したい感動作

 それにしても驚きなのは当時30代になったばかりのジュゼッペ・トルナトーレ監督が、ここまで人生というものを描けたことである。もちろん大ベテラン、エンリオ・モリコーネによる心揺さぶる感動的なスコアも映画の素晴らしさを下支えしているのだが。

この名編を最初に映画館で見るべきという考え方に変わりはないが、高画質のBlu-ray Discで手元に残せるということも驚異的な出来事と言えるだろう。しかし残念なことに本作でアルフレードを演じたフィリップ・ノワレは2006年に、このBlu-ray Disc版を見ることなく他界している。もし自分の出演した作品が、永遠にこのような形で輝きを保ち続けることを知ったら、彼はどれほど喜んだろうか。映画の中で、かつては可燃性だったフィルムが燃えなくなるのを目の当たりにして、火事で盲目になったアルフレードはポツリと語る。「進歩はいつも遅すぎる」。

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