麻倉怜士のデジタル閻魔帳
「ワーナー・ショック」の本質(1/3 ページ)
日本時間の1月5日早朝、ワーナー・ホーム・ビデオがHDビデオソフトのBlu-ray Disc一本化を決定した。いわゆる「ワーナー・ショック」だ。これまでHD DVDとBDの両フォーマットをリリースしていた同社がBDのみの支持を決めたことで、フォーマット戦争は終結に向かうという観測がなされている。
デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏が、最新トレンドをいち早く、しかも分かりやすく紹介してくれる月イチ連載『麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」』。International CESの後にハリウッドの各スタジオへ立ち寄り、米国の最新情報を取材した麻倉氏に“ワーナー・ショック”の本質を尋ねた。
フォーマット戦争の「流れ」
――前回(麻倉怜士のデジタル閻魔帳:CESで分かった2008年のトレンド)にもうかがいましたが、International CESの会場でも、ワーナーのBD一本化は本当に大きなニュースとして話題になりましたね。
麻倉氏: ワーナー・ショックは本当のショッキングなニュースでしたね。International CESの会場でも広く知れ渡っていて、BD/HD DVD両陣営ブースの温度差が非常に印象的でした。これまで各種展示会でも両陣営は隣り合わせになったことはありませんでしたが、今回は南館で中央階段を挟んで隣接していまして、HD DVDのブースはまったくもって閑散としている一方、BDのブースは常に黒山の人だかりでした。
CEATEC JAPANの時にも感じたのですが、BDブースの広さやアクティビティに対して、HD DVDブースはいまひとつという感じが否めませんでした。非常に対照的な雰囲気を醸し出していたといえるでしょう。
フォーマット戦争というものは一度タガが外れると、一気に傾いてしまうものです。ハード/ソフト/サービスが1つの方向を向いていれば安定しますが、戦争では、あるシェアが達成された瞬間、多数はそちらへ流れ込みます。
βとVHSを例にすれば、双方が登場した最初の5年ぐらいは拮抗していましたが、あるタイミングでソフトがVHS優勢になると、一気に流れはVHSへ傾き、1987年ごろには完全にVHSが優位となりました。その後、βの旗振り役であったソニーもVHSデッキを投入するに至り、戦争は終結しました。
BD/HD DVDがその例と類似しているはそうした「流れ」です。これはアメリカの統計ですが、それまで1:1で推移していたBD/HD DVDのハードウェア販売が、ワーナー・ショックの後には9:1とBDの優位が高まりました。その後、HD DVDプレーヤーのディスカウントで、ある程度回復しますが。流通関係者や消費者は動向に敏感ですね。ロスアンゼルスで、販売店の販売員に「HDプレーヤーを買いたいが、BDとHD DVDどちらを選べばいいか?」と尋ねましたが、「規格戦争に勝ったのだから、それはBDだ」と即答されました。
シングルフォーマットを求めたワーナーの決断
麻倉氏: なぜそこまでBDの優位が明確になったのか。原因としてワーナーの動きを挙げない訳にはいかないでしょう。ここ5年ほど、私は毎年ハリウッドのスタジオへ取材に出かけていますが、ワーナーはまさにトレンドセッターだと感じています。
古い話になりますが、MMCD(Multimedia CD:フィリップスとソニーが推進したビデオディスク規格。1.1ミリ厚ディスクに3.7Gバイトの記録が可能)とSD(Super density Disc:東芝やパナソニックらが推進したビデオディスク規格。0.6ミリ厚ディスクに5Gバイトの記録が可能)の競争時――最終的にはSDが勝利し、今のDVD規格が誕生するのですが――、その勝因はCDとの互換性を犠牲にしてまでも実現した大容量化でしたが、もうひとつ要因がありました。ワーナーによる、多角的なサポートです。この時の話は、私の最初のDVD本「12センチギガメディアの野望」(オーム社)に詳しいです。
今回のBD/HD DVDに話を転じても、ワーナーとしては以前からシングルフォーマットにしたいという想いを強く持っていました。2004年にHD DVD、翌年秋にBDの採用も発表しているのですが、話を聞くと一貫してシングルフォーマットで行くべきと強調していました。フォーマットが複数存在することで消費者が買い控えすることを恐れたのですね。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「菜の花がおかしい」――イラストレーター制作うたうマラソン大会ポスターに指摘相次ぐ 事務局がAI使用明かす【訂正あり】
-
2
iPhone 18シリーズ発表、今年はPro・Pro Maxのみ なんと“無印”なし 価格は21万9800円から
-
3
「iPhone Duo」発表 Apple初の折りたたみスマホ 36万4800円から
-
4
幻の「ちいかわ」コラボ第3弾皿、捨てちゃうの? くら寿司に聞いてみた
-
5
「ペンギンを返して」 Suica新キャラ候補3案公開でSNSに戸惑いの声 一般投票は8日から
-
6
「ランジェリーパープルじゃない」「買おうと思ってたのに」 iPhone 18 Pro/Pro Maxの色に落胆の声
-
7
藤井風のリサイタル、公式サイトがインターネット老人会すぎると話題 公民館のチラシみたいだけど東京ドーム開催
-
8
スーパーでおなじみ「呼び込み君」に新型 26年越しの“新曲”も配信
-
9
「ペンギンを返して」→「3匹全部採用して」 批判殺到のSuica新キャラ、ファンアートが空気を変えた? SNSの声
-
10
「iPhone Duo」純正ケース話題、「面白いけど高い」……1万4800円と2万4800円
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR