今回で41回目を迎えた世界最大級の家電の祭典「International CES(Consumer Electronics Show)」が今年も米ラスベガスで開催され、さまざまな新製品/新技術/トレンドが紹介された(詳細は2008 International CES特集を参照)。
デジタルメディアのトレンドをいち早く、しかも分かりやすく紹介してくれる麻倉怜士氏の月イチ連載「デジタル閻魔帳」。毎年1月前半は米国で過ごす“CESの水先案内人”こと麻倉氏に、CES取材を通じて明らかになった“2008年のトレンド”を語ってもらった。
――今年は開催前にワーナー・ホーム・ビデオがHDビデオソフトのBlu-ray Disc一本化を急遽決定するというワーナー・ショックがあり、波乱の幕開けを予感させましたね。まずは展示会場を俯瞰してみての感想はいかがですか。
麻倉氏: 今年は例年にも増して、新機軸も目立ちました。私は毎年この展示会に足を運んでいるのですが、今年は去年との違いをかなり感じました。確かに派手さは少ないかもしれませんが、地に足のついた進化の方向性が見えます。その方向性を3つに分けて説明したいと思います。
麻倉氏: まずはテレビの革新です。テレビは50年以上に渡って家庭の娯楽の王様として君臨してきましたが、デジタルとネットワークのパワーを身につけることによって、より力強さを増してきているように感じます。
その中で最大の話題はパナソニックが基調講演で披露した、象も原寸大に映せる150インチの4K2K(4096×2160ピクセル)プラズマテレビです。聴衆から大きな拍手と歓声が沸き起こりましたが、その拍手は超大型テレビをつくったことだけに向けられていただけでなく、映し出されていた映像に対しても送られていました。
私が松下電器の担当者から、アメリカの人の反応として聞いた話ですが、英語では「a elephant in the room」という言い方で、「注目しなくてはならないほどすごいこと」を表現するということでした。つまり、彼らは刮目したのですね。象にも、象が等身大で映っているプラズマテレビにも。
150インチといえば室内におさめるのも大変なことですが、このサイズまで来れば「映像の壁」ともいえる新しい概念を提供してくれます。基調講演でも、「スイスへ行く」といえば雄大なスイスの山々の映像、テレビ電話ならば等身大の映像を映し出すなど、革新的な使い方を提案しており、家庭における映像の使い方が新たな次元に入ったことを感じさせました。
画質が非常に高いことにも注目です。4K2Kの解像度は高い精細度をもたらしており、これだけのサイズながら近づいても高精細です。展示品は、同社尼崎第四工場で生産された50インチの9面取りが可能なプラズマパネルを1面まるまる利用しているのですが、米国への運搬や安定した発光を実現するため、相当な苦労をしたと聞きました。その甲斐もあり、会場へ運び込まれた3台は問題なく稼働していました。
麻倉氏: パイオニアが発表したPDPコンセプトモデルの“究極のコントラスト”モデルも見逃せません。ちょうど1年前のInternational CESで発表された「計り知れない黒を実現するプラズマディスプレイ」(のちに「KURO」として商品化される)にも感動しましたが、今年はさらにコントラスト比を高めてきました。
今回は予備発光をなくすという技術開発が根幹にありますが、その漆黒さは現行のKUROが液晶テレビに見えるほどです。ここまで黒の表現力が高まると、映像表現そのものが変わってくるように感じます。同じ映像でもグラデーションが増えるので、花火などを見ると夜空が完全に背景に沈み、打ち上げた際の煙まで視認できるようになるなど、これまで見えなかったものまで見えてきます。
同時にピーク感も素晴らしくなっています。黒が沈んだおかげで白が引き立ち、ダイナミックレンジが広がった印象を受けます。これを見ていると、プラズマにはまだまだ進歩の余地があるのだなと感じました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR