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コラム
» 2008年03月31日 14時00分 公開

小寺信良:IPマルチキャスト放送で揺れるホームネットワーク (2/3)

[小寺信良,ITmedia]

 オンデマンドTVはIPv6を利用したサービスなので、当然家のルータやハブ、無線LANルータなどもIPv6のものに切り替えてある。ところがマルチキャストの特性として、相手が見ていようが見ていまいがパケットを送りつけるという仕様なので、家庭内でもそれをやってしまうのだ。

 有線でつながっている部分は映像パケットが流れ込んできても余裕があるが、困ったのが無線LANである。当然無線LANルータにも映像パケットを送りつけてくるので、チャンネルサービスの使用中には無線LANが使えないという問題が起こった。使用しているのはバッファローの「WHR-G54S」というモデルである。約3年前の製品ではあるが、これまで不具合もなく十分役に立ってきた。

 バッファローのサポートに相談したところ、これは無線LANルータの設定にある、「Multicast Rate」を手動で設定することで解決できるそうである。これは、ルータの持つ帯域のうち、マルチキャストにどれだけ割り当てるかという設定だ。デフォルトの設定値は、802.11gの場合1Mbpsとなっているそうで、こうなると4Mbpsのパケットが来ても1Mbpsしか出せず、バッファにパケットが貯まりまくって身動きが取れなくなるということのようだ。

photo 「WHR-G54S」はマルチキャストにどれだけの帯域を割り当てるかを手動でも設定できる

 オンデマンドTVのビデオサービスでは、SDコンテンツは約4Mbps、HDコンテンツは7〜10Mbpsという資料がある。おそらくチャンネルサービスでも、同じようなビットレートだろう。従ってそれ以上のビットレートに設定すればいいことになる。

解決

 ただこれも、抜本的な問題解決にはなっていない。なぜなら、例えばMulticast Rateを10Mbpsに設定すると、無線LANルータは10Mbpsの速度を確実に担保しようとするので、実質10Mbps以下の速度しか出ないクライアント、例えば11bでしか接続できないゲーム機、ルータから離れた場所にあるPCなどは、接続できなくなってしまう。裏を返せば、無線LANの到達範囲が短くなるということでもある。

 無駄なパケットがガンガン流れるわけだから、通信速度もその分低下する。実際の接続速度を計測したところ、チャンネルサービスを視聴していないときの無線LAN接続の速度は平均26Mbpsであるのに対し、チャンネルサービス視聴中は約半分の14Mbps程度まで低下していた。

 そもそも地デジ用のアンテナを建てれば、IPマルチキャストを使わなくてもいいのではという意見もあるだろう。筆者は先日、地デジ用アンテナ設置をしてもらったが、工事費などを含め6万円ほどかかった。BSアンテナもついでに付けてもらったのでこの価格だが、UHFアンテナのみだと4〜5万といったところか。単純配線でもそれぐらいなので、既存の屋内配線やケーブルテレビとの混合などを行なうと、もっとかかるだろう。それなれば他の多くのサービスが受けられるBフレッツに全部をゆだねるという決断も、あり得るのではないだろうか。

 現在は1チャンネルしか視聴していないが、将来IPマルチキャスト放送が普及したときに、家のテレビ3台で別々にハイビジョン放送を視聴したとすると、少なくともMulticast Rateを30Mbps程度に設定しなければならなくなる。それでは実質11g、11aでも接続できないクライアントが続出するだろう。またどのルータにも、Multicast Rateの設定があるとは限らない。設定がない場合は、IPマルチキャスト放送の導入時に、ホームネットワークに何が起こるか分からない。

 おそらく多くのブロードバンドサービスのSTBが、マルチキャストでなければ放送サービスをキャッチしない仕様になっているため、このようなことになっているのだろう。しかし接続されているクライアントのほとんどがテレビと関係ない機器であるホームネットワークに、全クライアントに対してパケットを送りつけるマルチキャスト方式を持ち込まなければならないのか、という抜本的な疑問が残る。

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