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コラム
» 2008年05月12日 10時30分 公開

小寺信良の現象試考:インターネットの教科書を作ろう (2/3)

[小寺信良,ITmedia]

 あるいは中・高校生向け簡易版として、2ちゃんねるまとめサイト風テキストにしてみるというのも面白いかもしれない。今年のエイプリルフールでは、円谷プロが制作したパロディが秀逸であったが、ああいう表現は、興味を持ってもらえるかもしれない。

 こういうアプローチは、子供たちにおもしろがって貰えることも大事だが、制作者自身が楽しんでやれるかということにも注意している。大体においてこういうプロジェクトは、どうしてもちゃんとやろうとしすぎる余り杓子定規になってしまって、作るのが辛いノルマになりがちだ。

 筆者がエンタテイメントの世界に長くいて学んだのは、作り手がつまらないと思っているものは受け手にもつまらないということである。作るのが面白いものでなければ、モチベーションは維持できない。特に多くの人材にボランティアで動いてもらうからには、こういう点は大事である。

IT技術を使って何かできないか

 なんだか大風呂敷を広げた格好になってしまったが、これらの派生教科書の制作を行なうには、MIAU以外の多くの人の協力が必要になるだろう。だがその前に、まずその骨組みとなるテキストが必要である。こういう地味であんまり面白くなさげな作業は、MIAUが担当する事になる。

 制作に関しては、オープンプロジェクトにすべきという意見もある。もちろん目指す形がしっかり決まったら、オープンに進行していくことは考えられるが、まだソースもない現時点では、船頭多くして船山に上る状況になりかねない。このプロジェクトは、ぐだぐだで空中分解するという可能性を限りなく排除して行く必要がある。とりあえず頭からシッポまで一通り揃った形のたたき台となるベーシックなテキストは、MIAUの責任で作成すべきだろう。

 我々自身が書き手になるからには、「ネットで数多くひどい目にあってきた経験」を生かしたものにしたいと思っている。そして、それらのトラブルからいかにリカバーしていったか、という情報を盛り込んでいきたい。

 ネットは人生と同じで、失敗なしに歩くことを教えることはできない。いや教えたとしても、子供は言うことを聞かない。子供とは大人の言うことよりも、好奇心のほうを優先する生き物なのである。だから、失敗したらどうやってリカバーするかを教えることのほうが、重要だと考えている。一度も転ばないで、自転車に乗れるようにはならないのと同じ理屈である。

 例えばネットイジメの問題にしても、これらの教科書で語るだけでは、十分ではないかもしれない。では人工知能プログラムを使って、架空の人格をいじめる経験をしてみるのはどうか。そしてそれとセットで、よってたかって人工知能プログラムにいじめられる経験をしてみる。

 これまで我々は、特定の存在へ無理に理由付けして攻撃・排斥したときに得られる原始的な感情とはなにか、それを得ることの代償に失うものは何かといったことを、人生そのものを賭けて学習するしかなかった。しかしそれがプログラムによって仮想的に学習できるのであれば、それは人類がかつて経験したことのない体験となるだろう。

 今のIT技術を使って、これからネット社会に入ってくる者たちへの学習に役立つものを作ることは、アイデアさえあればできそうだ。ただ誰もそんなことをやってこなかったわけで、技術は利便性と快楽と金儲けのために使われてきた。そのツケをネット規制という形で払わされそうになっているというのが、昨今の情勢であろう。ならばその前に、実際に手を動かしてモノを作って行くというのが、建設的発想というものである。

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