見えてきた“高度BSデジタル放送”の姿(1/2 ページ)
最近、話題の「高度BSデジタル放送」――アナログ停波と同時期(2011年)に開始される予定の“次世代衛星放送”だ。東京・世田谷のNHK放送技術研究所で開催されている「NHK技研公開 2008」の内容から、NHKが考える新しい放送サービスの姿を探ってみよう。
高度BSデジタル放送は、2011年に終了するBSアナログ放送の“跡地”と、世界無線通信会議で日本に追加割当された4チャンネルを合わせた計7チャンネルを活用する新しい衛星放送。2006年9月の情報通信審議会で具体的な検討が始まり、放送事業者や機器メーカーが参加する電波産業会(ARIB)を中心に仕様の策定作業が進められている。
NHKは、ARIBの放送方式案募集に対して伝送容量の拡大を図った符号化方式やHDTVを超える映像フォーマット、マルチチャンネル音響技術など幅広い提案を行い、これらは2008年1月にまとめられた中間報告の“暫定方式案”に反映された。現在は、この暫定方式案に基づいて実証実験を実施している段階だ。
研究発表として講演を行ったNHK技研の田中祥次氏は、「NHKの考え」として、画質の向上、高速ダウンロードサービス、IPへの対応という3つのポイントを挙げた。「単なる多チャンネル放送ではなく、最新技術を盛り込んだ新しい放送。地上デジタル放送などでは実現が困難な高度サービスを目指す」。
スーパーハイビジョンの実際
画質の向上という点では、やはりNHKが提唱するスーパーハイビジョンに注目が集まる。スーパーハイビジョンは、7680×4320ピクセルと画素数にして現行フルハイビジョンの16倍。しかも毎秒60フレームのため、非圧縮の状態では映像だけで24Gbpsという膨大な情報量になる。もちろん、そのままの状態で放送波に乗せることはできない。
NHKは、MPEG-4 AVC/H.264を用いてスーパーハイビジョン映像を118Mbpsまで圧縮する符号化システムを開発。ダイエットの秘密は、H.264の高い圧縮率に、レート制御を組み合わせたことによる。例えば、輝度の低い領域は視覚的に画質の劣化が見えやすいため、ビットレートを多く割り当てるなど、画質劣化を防ぐ制御を行っている。
| スーパーハイビジョン | 現行ハイビジョン | |
|---|---|---|
| アスペクト比 | 16:9 | 16:9 |
| 画素数 | 7680×4320 | 1920×1080 |
| 走査線構造 | プログレッシブ | インタレース |
| フレームレート | 59.94Hz | 29.97Hz |
| 映像コーデック | MPEG-4 AVC/H.264 | MPEG-2 |
| 音声コーデック | AACなど(最大22.2ch) | AAC(最大5.1ch) |
| 標準的な視野角 | 100度 | 30度 |
また最大22.2chのサラウンド音声もACCで2chごとに圧縮し、約2Mbpsまで圧縮する。スリムになった映像と音声は、ストリーム多重化器によって126MbpsのMPEG-2 TS(トランスポート・ストリーム)となる。
ただ、高度BSデジタル放送の暫定案におけるスーパーハイビジョンの位置づけは、あくまで「実験用」だ。NHKはスーパーハイビジョンを提案した当初から2025年の実用化を目指すとしており、少なくとも2011年の時点で本放送が始まるわけではないだろう。その代わり、高度BSデジタル放送ではスーパーハイビジョン以外に1920×1080/60i、1920×1080/60p、3840×2160/60pの映像フォーマットが用意されている。いずれも現行ハイビジョンより十分にリッチな映像を提供してくれるはずだ。
音声にも複数のオプションが用意されている。22.2chのAACには5.1chや7.1chなど多くのダウンミックスモードを設定することが検討されているほか、音質を重視したリニアPCMやロスレス音声の採用も視野に入れている。非圧縮のリニアPCM、理論的に音質劣化のないロスレス音声は、アナログBSのBモードステレオ後継の高音質サービスと位置づけられる。
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