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音質の改善が著しいHDMI対応機器(前編)(2/2 ページ)

» 2008年06月19日 03時19分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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HDMIの音質が改善された理由

 そうした“HDMIの音質”改善が進む前の段階で音が比較的良かった機種は、何が良かったのか? というと、どうやらHDMIサブ基板周りの電源設計が優秀だったようだ。HDMIレシーバーチップは、内部でグランドレベルが激しく揺さぶられるので、グランドの強化が音質に良いとされた。こうした工夫が徹底的に行われたのが、一昨年末以降の製品だ。

 この時点ではまだ“HDMIの音は悪い”というイメージを払拭できなかったが、しかし、充分に聴けるレベルには達してきた。が、音質に対してさらにコダワリをもって、その質感を追い求めるとなると、あともう一段の工夫が必要になってくる。

 そこで昨年末以降、上位機種から順に採用されてきているのが、HDMIレシーバーチップが音声データの受信後に作るデジタル音声信号のジッターを除去する回路だ。各社さまざまな名前をつけているが、ジッター低減を目的とした回路の使い方は各社ほぼ同じだ(レシーバー直後にジッター除去するものと、DAC直前で除去するものがある)。

 これはHDMIレシーバーチップ内蔵のPLL回路にロックさせて出力しているデジタル信号を、別の高音質なPLL回路に再ロックをかけて出力するというもの。あくまでPLL回路を二重にかけているだけなので、完全にジッターが取れるわけではない。

 しかし、実はジッター量の大小よりも、音の質感はPLL回路のクセの方に影響を受けやすい。ジッターは均一に入っている場合、DACからの出力においてランダムノイズとなる(S/Nは悪くなるが、音の質感にはあまり影響しない)。では質感は何で変化するか? というと、横軸方向の不安定な揺らぎではないか? という説が有力だという。

 このあたりは議論のあるところだろうが、しかし、PLLの違いによって音の質感が変化することだけは間違いない。それまで各社とも似た傾向の質感、音質劣化傾向を持つ製品が多かった(ほとんどの会社がシリコンイメージ製レシーバを使っていたからだろう)が、ジッター除去回路が入った製品は、メーカーごとのキャラクターが分かれるようになってきたのだ。ちなみにパイオニアは上位機の「SC-LX90」などにおいて、ジッター除去回路の後ろにサンプリングレートコンバーターを入れることで、さらにデジタル音声信号の品質をトリートメントしている。

photo パイオニアの「VSA-LX51」は3系統のHDMI入力を搭載する。価格は15万円。6月下旬に発売予定だ

 そしてこの春、いくつかの新製品を試聴してみたところ、さらに改善が進んで低価格製品にまで、HDMIの音質向上対策が施されるようになったことを、試聴でも確認することができた。

 中でもHDMIの音という面で改善が感じられたのが、パイオニアが先日発表した「VSA-LX51」である。LX51は、同軸デジタルで接続した場合よりもHDMIの方が良いと思えるところもあったぐらいだ。

 傾向としては同軸デジタル時には音像がしっかりとして、低域にコシがあるのだが、HDMIでは低域の力感がやや損なわれるように感じられた。音像もやや甘くなるかもしれない。しかし、音場の豊かさは素晴らしく、例えば2チャンネルオーディオソースをかけている場合でも、録音の良いものであれば3D的に音が自分の周囲にまわってくれる。これは過去、HDMI接続では体験できなかったことだ。

 対応プレーヤーの数が非常に限られるが、SACDをLX51のHDMIで聴くと、これがまた豊かで濃い音場を作り出して心地よい。ここまで来れば、HDMIの音質も「同軸デジタルとの違いは、好みの差ぐらい」といいたくなる。

 ただし、HDMIで良い音を獲得するには、ちょっとした工夫も必要だ。後編では、そのあたりについて触れることにしよう。

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