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デノン「AVC-1909」で「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」の流麗な音楽を聞く山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.20(2/3 ページ)

» 2008年08月06日 04時16分 公開
[山本浩司,ITmedia]

機能充実のエントリーモデル

 上級機のデザインテイストを受け継いだ、フロントパネルを曲面処理したAVC-1909のルックスはたいへん好ましい。前面のディスプレイ部が大きく取られており、視認性もよい。個人的には、ヤマハ、オンキヨー機と並べても、いちばんしっくりくるデザインで、気に入っている。

 本機は、浮動小数点処理のできる32ビットDSP、アナログデバイセズのSHARCを搭載し、先述したHDMI Ver1.3入力されたロスレスオーディオのデコードを可能にしている。定格出力は、全チャンネル・イーブンの90ワット(8オーム)の7チャンネルアンプ構成。サラウンドバック・チャンネルを使用しない場合は、そのアンプをフロントL/Rのバイアンプ用として生かすこともできる。

photo AVC-1909の背面端子。サラウンドバック・チャンネルを使用しない場合は、そのアンプをフロントL/Rのバイアンプに活用することもできる

 内部コンストラクションを見ると、信号の引き回しを最短化し、信号の劣化を抑える「ミニマムシグナルパス」思想が生かされているのが分かる。振動発生源となる電源トランスは、フットの直近に直付けされ、専用のプレートとともにボトムシャーシに固定されている。このへんのきめ細かな作り込みが、最終的な音質を大きく決定づけることになるのである。

 音声信号処理回路で興味深いのは、音の大小をリアルタイムで調整する「Audyssey(オデッセイ)Dynamic Volume」の採用。番組によって音のレベルが大きく異なり、その都度音量調整を余儀なくされた経験がおありの方は多いと思うが、この回路は、ソースの音量を常にモニタリングして、聴感上のダイナミックレンジを損なうことなく、あらゆる音源を最適な音量に調整してくれるというもの。

 ちなみにAudysseyとは、ルーカスフィルムで「THX」を発案したトムリンソン・ホルマン博士が人間の聴覚心理研究の成果を反映させた、AVアンプ用音質調整信号処理回路である。本機には、Dynamic Volumeのほかに、部屋の音響特性を計測して、それに最適な音響効果を付加する「Audyssey Multi EQ」と音量を絞った際に聞きとりにくくなる高域、低域を補う「Audyssey Dynamic EQ」が採用されている。

 また、ネット配信された高圧縮音源などをよく利用される方には、本機の「Compressed Audio Restorer」もたいへん有用な機能といえる。MP3やWMA、AACなどのロッシーオーディオ・フォーマットは、人間の耳に聴こえにくい部分の信号を省いてデータ量を削減しているわけだが、このCompressed Audio Restorerは、圧縮解凍時に復元できない信号を生成し、圧縮前のオリジナルデータに近い状態に復元する機能といっていいだろう。本機のこの機能には3つのモードが用意され、圧縮率に応じてそのモードのどれかを選ぶ仕様。もちろん高圧縮の音声ほど高域、低域の音質補正量が大きくなるわけである。これはドルビーデジタルやAACなどのサラウンドサウンド・フォーマットにも有効だ。

 HDMIは入力3、出力1系統。本機は、コンポーネントやSなどのアナログ映像入力信号を1080pに内部変換し、HDMIで出力できるアップスケーリング機能も有している。i/p変換をつかさどるのは、ファロージャのDCDi回路である。

 さて、実際に本機の音を聞いてみて感心したのは、価格の枠を感じさせない本格的な帯域バランスとよく磨き込まれた音のテクスチャーだった。先述したように、オンキヨーTX-SA606XやヤマハDSP-AX763は、音の細かい部分を磨くよりも、まず元気のよさ、力強さをアピールする音に仕上げられていたが、本機はより大人っぽい雰囲気の音にまとめられている。この音のテクスチャーを生かして、まず観てみたいと思ったのは、この6月に発売されたBD ROM「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」である。

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