新iPod nanoに採用されている加速度センサー(モーションセンサー)は、上下・左右・前後の3軸方向に対する速度の加わり方を感知する装置だ。この装置を使用することにより、物体が動く方向やスピード、傾きなどの情報を入手できる。自動車のエアバッグやカーナビシステムも、この加速度センサーの働きにより衝撃の発生や進行方向を感知していることは、よく知られている。
新iPod nanoを含むiPhone/iPodシリーズ(shuffleを除く)では、この加速度センサーを利用し、本体を持つ方向や傾きを測定している。垂直方向に持てば画面を縦に、水平方向に持てば画面を横にと自動で切り替えるしくみは、加速度センサーなしでは難しい。音楽を再生中に水平に持つとカバーフロー、振るとシャッフルというギミックも、内蔵の加速度センサーにより実現されている。
現在の小型加速度センサーは方式で分けると、「ピエゾ抵抗方式」と「静電容量方式」の2つが主流。前者は、半導体に生じたゆがみにより変化する抵抗率を測定し、後者はセンサー内部の可動部分が動くことで生じた電流を測定する、という違いがある。どちらの方式も小型チップとして実装可能なため、携帯電話やデジタル家電での採用事例は多い。
アップルでは、2005年1月発売の「PowerBook G4」以来、ノートブックに加速度センサーを搭載している。その目的は、不意の落下を自動検出してHDDをロックし、故障などによるデータの消失を未然に防ぐというもの。それ以外の使い方は基本的にされておらず、加速度センサーを活用したアプリケーションに目立つものは少ない。
しかし、同社内でその流れに変化を与えているのが、iPhoneおよびiPod touchだ。任天堂の家庭用ゲーム機「Wii」が成功を収めた理由として、静電容量方式加速度センサー搭載の「Wiiリモコン」を活用したゲームタイトルの存在が挙げられるよう、加速度センサーは入力デバイスとしての可能性も秘めている。
iPhone/iPod touchには、加速度センサーを入力機器のひとつとして積極的に活用する動きが見えており、実際、iTunes Storeの「App Store」では、この加速度センサーを利用したゲームが続々と登場している。人間の感覚に近い入力を可能とするデバイスなだけに、この傾向は今後も続くことだろう。
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