前回の本連載では、パナソニック「DMR-BW930」のインプレッション・リポートをお届けしたが、今回はそのライバル機と目されるソニー「BDZ-X100」をとり上げてみたい。というのも、DMR-BW930とほぼ同時にBDZ-X100を入手し、そのパフォーマンスを自室でじっくり比較することができたからである。両機のどちらを買おうか迷っておられる方の参考に少しでもなればと願いながら、書き進めたい。
地デジ/BS/110度CS×2のデジタルWチューナーに、1Tバイトの大容量HDD、それにMPEG4 AVCの長時間HD記録とメインフィーチャーはほぼ同じ両機だが、ルックスはずいぶん異なる。薄型を印象づける、素っ気ないデザインのDMR-BW930は、偏芯インシュレーターのフットこそ付いたが、家電チックなその外見から、恐るべき性能を秘めた超ハイテクマシンという趣は感じられない。
いっぽう厚さ4ミリのアルミ天板がおごられたBDZ-X100は、画質・音質に悪影響を与える振動をボディー強度を上げることで抑え込もうという意図が読み取れる本格派のデザイン。高級オーディオ機器の隣に置いてもさほど違和感を抱かせない雰囲気のある仕上げである。もし店頭にこの2台が並べて置いてあったら、“見た目”に弱いぼくなど、間違いなくBDZ-X100を買って帰ることになるだろう。
というわけで、デザイン・仕上げはBDZ-X100の勝ち。では、画質はどうだろうか。
まず録画性能について見ていこう。本機は、DMR-BW930同様、デジタル放送(MPEG-2)のトランスポートストリーム(TS)信号をそのまま記録するDRモードのほかに、MPEG4 AVC/H.264ハイプロファイル・エンコーダーを使って再圧縮し、ハイビジョンの解像度を保ったままHDDやBDへ長時間記録できるAVC記録機能を持っている(DMR-BW930とは異なり、DVD-RやDVD-RAMには記録できない)。昨年のBDZ-X90のAVCエンコーダーはハイプロファイル仕様ではなかったため1920フルHD録画ができなかったが、X100ではXR(一層BDに約3時間)、XSR(同約4時間)、SR(同約6時間)でそれが実現されているのが、大きな進化ポイントといっていいだろう。
また、最後までやるかやらないかソニー技術陣も決めかねていたという5.5倍録画(一層BDで12時間)の低ビットレート(4.3Mbps)のLRモードも搭載された。同じく5.5倍録画をうたうDMR-BW930のHLモードと比較してみたが、どちらも被写体が速く動く映像には追随しきれず破たんを見せるが、傾向としてはDMR-BW930はなんとかハイビジョンらしさを維持しようという“攻め”の画調、X100は甘い画質だが、なるべくノイズを目立たせないようにという意図が感じられる“守り”の画調だと思った。とにかく、いかに長時間記録が魅力とはいえ、やはりハイビジョンの魅力を味わうには1920フルHD記録が可能なSRモード以上を使うべきだろう。
そんなわけで、AVC録画のハイビットレート・モードでDMR-BW930とBDZ-X100を見比べると、わずかな差ながらDMR-BW930のほうがより好ましい画質に仕上がっていると思った。DMR-BW930は、低ビットレートのHLモードと違って、動きのある被写体にまとわりつくモスキートノイズがよく抑えられているし、なにより見た目の解像感が高いのである。比較すると、BDZ-X100はややおっとりした画質に見える。全体にノイズ感はよく抑えられており、非常にすっきりした画調だが、DMR-BW930に比べると絵がおとなしく、訴求力に欠ける印象。しかし、いずれにしてもフルHD記録を実現したX100のAVC記録時の画質レベルは、昨年のモデルに比べて著しく向上していることは間違いないのだが……。
AVC録画時の音声仕様についても触れておこう。DMR-BW930は放送のAAC音声をそのまま無変換で記録できるように改められたが、BDZ-X100は一度AACをデコードし、ドルビーデジタルに再エンコードする仕組み。どう考えてもAACダイレクト保存のDMR-BW930のほうが音がいいのではと思えるが、実際に聴いてみると、案外そうともいいきれないのが面白い。ドルビーデジタル変換されるX100の音は、音の勢いはそがれる印象だが、音の整いがたいへんよいのである。DMR-BW930と比較しても、音場感が豊かで、バランスのよい音に感じられる。これはBDZ-X100音質担当者のチューニングをたたえるべきだろう。
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