バンダイの「ツッツキバコ」は、空洞の箱に指を入れると液晶画面に自分の指が現れ、パンダやアメーバといったキャラクターをつつきまわして遊べるというリアクション系玩具(→穴に指を入れると何かが……バンダイ「ツッツキバコ」)。穴があれば中を探りたくなるという人間の心理を巧みに利用した新タイプの玩具だが、どうやらそれだけではないようだ。
実は、ツッツキバコは製品リリース前からネット上で話題になっていた。10月22日のリリース直前まで「ツッツキ__」と題したティーザーサイト(予告サイト)が公開されていたからだ。
黒いシルエットがカクカクと動き、動画の中では若い女性が「わー、入ってる入ってる。すごーい。奥でつっついてる……(中略)あーあ、いっちゃった」などと大胆発言。肝心の部分がモザイク処理されていることも手伝い、あれこれ想像しちゃった人が全世界に6万人以上もいた。
現在、このティーザーサイトは残念ながら(?)製品情報サイトに変わっているが、製品と予告サイトを企画したバンダイ・プレイトイ事業部では、ツッツキバコが“ヒトの本能を刺激するアイテムである”ことを端的に示したと話す。
「∞プチプチのとき、“アフォーダンス”という心理学用語が知られるようになりました(→プチプチ無限地獄へようこそ)。人は出っぱりがあると押してみたくなり、穴があると中を探りたくなるものです。∞プチプチは突起でしたが、ツッツキバコは穴。シンプルな外観にぽっかりと穴が空いているデザインにすることで、人は本能を刺激されます。ツッツキバコは、その欲求に応えることのできるアイテムといえるでしょう」(バンダイ、プレイトイ事業部の近藤創氏)。
ティーザーサイトが刺激したのは“別の本能”のような気もするが、近藤氏はツッコミを入れるすきを与えずに話を続けた。「最近、ニンテンドーDSやiPhoneのタッチパネル、(ジャイロセンサーを使った)携帯電話のゲームなどのように、直感的なインタフェースを持つアイテムが増えてきました。玩具メーカーのバンダイとしても、より面白い機構を作ってみたい。それなら、画面の表面ではなく、“内側”に触れるものを作ってみたらどうか」。
大胆すぎる発想の転換が、結果としてアフォーダンス理論に基づくユーザーインタフェースを実現した。アフォーダンス理論とは、前述の“突起があったら押したくなる”といった人間の心理作用を利用し、直感的に操作できる機器のユーザーインタフェースを検討するもの。例えば、カメラは“穴(ファインダー)をのぞきこんで、突起(シャッターボタン)を押す”ことで撮影が可能になるといったように、人はその形状を見ただけである程度の操作を推測できる。それは“使いやすい”ことと同義だ(参考文献:飽和するコンパクトデジカメ、脱却の糸口を探す)。
「それからもう1つ。ツッツキバコで遊んでいると、“触覚の錯覚”と呼ばれる面白い体験ができます」
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