HD DVDとのフォーマット戦争が終結し、“次世代”から“新世代”メディアとなったBlu-ray Disc。電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した2008年9月度の電子機器国内出荷実績によれば、BDレコーダー/プレーヤー(次世代光ディスクレコーダー/プレーヤー)は前年同月比10710.7%の13万8000台を出荷しており、DVDを含む出荷された光ディスク録再機のうち、BD機器が約3割を占めるという結果が報告されている。
パッケージに目をやっても多くの新作がBDソフトでリリースされているほか、レンタル大手のTSUTAYAも7月にBDソフトのレンタルを全国店舗で開始するなど、ハード/ソフトの両面でBDを楽しめる環境は整いつつある。
しかし、関係各社は「正念場はこれから」と市況を見つめている。DVDがあまりにも広く普及したため、「DVDで十分」という消費者のマインドを、まだ揺り動かせていないという感覚を抱いているためだ。
デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏による月イチ連載『麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」』。CEATEC JAPANのパネルディスカッションでは、「Blu-ray Discは人生を変える」とまで発言したハイビジョン・ラバーの麻倉氏が考える、BD普及の課題とは何だろうか。
麻倉氏: βとVHSの規格戦争の記憶がある人にとって「動向がハッキリするまでは手が出せない」という考えがあったはずですが、2月に東芝がHD DVDから撤退することでフォーマット戦争は終結しました。しかし、BDに関連する各社からすれば、新たな戦争に突入したといえます。
新たな戦争とは、DVDからBDへの遷移戦争です。これは一筋縄ではいかない、難しい要素を多く含んでいます。1996年11月に登場したDVDは、VHSからのメディアチェンジを経た訳ですが、日本市場で完全にシフトするまでには4年ほどの時間がかかっています。その推進に大きな役割を果たしたのがPlayStation 2(PS2)であることは広く知られていますね。
タマゴが先かニワトリが先かという議論もありますが、ハードウェアがなければソフトウェアは再生できません。メディア戦争において、ハードウェアの力は大きいのです。ちなみに、先ほど述べたように、日本ではVHSからDVDへのメディアチェンジは4年ほどかかりましたが、録再機ではなく再生機が重視されるアメリカでは2年ほどで両メディアが拮抗(きっこう)するまでに至っています。
それでは、アメリカにおけるBDの普及は現在、どのような状態なのでしょう。今春には2〜3%のシェアでしたが、11月上旬でもその数値は8%程度とさほど伸びていません。逆に売り上げは景気減速の影響を受けてか3割ほど減少しています。日本でも映画などBDタイトルは順調にリリースされていますが、DVDから急激にシフトしているという訳ではありません。
レコーダーという側面から見れば、既に販売される市場製品の半分はBDとなっており、年末には6〜7割に達するでしょう。録画した番組をHDDに入れっぱなしの人が多いことは問題ですが。2011年にはSDの地上アナログ放送は停波しますし、確実に時代はハイビジョンへシフトしていきます。アメリカで言えば、BDソフトのタイトル数は年末に1000へ届くでしょう。DVDからBDへ移行する準備は整っているのです。
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