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自分にピッタリのイヤフォンを選び出す――カナル型編バイヤーズガイド(3/6 ページ)

» 2008年11月27日 08時30分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]

試聴時のポイント

 ここまで製品選びに関してのチェックポイントを紹介してきたが、実際に店頭などで試聴する際の注意点も述べよう。音を確認する際は、オーバーヘッドタイプと同様、店員に断って自分のiPodなどを持ち込むのが望ましい。いつも使っているiPodのいつも聴いている曲の方が、自分の好みか否かを的確に判断できるからだ。

 また、試聴機のエージングがどれくらい進んでいるかも重要。オーバーヘッドタイプほどシビアではないが、カナル型であってもエージングは必要。帯域バランスや音の抜けが悪いものや、高音が耳障りなものはたいていエージング不足なので、それらを加味してチェックすることが必要だ。

 最後に低音のボリューム感にも留意して欲しい。店内は実際に使用する環境と騒音レベルが異なっているからだ。オーバーヘッドタイプほどではないが、まわりの騒音レベルによって聞こえ方が変わってくるのは確か。電車内など比較的音量の多い場所でよく使う人は低音が好みよりも多少強めのものを、逆に室内など静かな環境でよく使う人はそのままの印象で選んでもらってかまわない。

 さてここからはあまたある製品の中から、おすすめできるものをピックアップして紹介しよう。最新モデルの傾向としては、実売が1万円前後と2〜3万円クラスに人気が集中しており、それを区別して紹介すべく、価格帯を「1万円以下」「1万円以上」「価格無制限」という3カテゴリーに分けることにした。

 さらに内容に関しては、それぞれの製品特性がわかりやすいよう、簡単な解説に加えて、音に関するリポート(試聴にはiPod touchとiPod nanoを使用)と、チェックポイントの参考となる音色傾向の表を添付した。これらを参考に、自分好みの製品を選びだして欲しい。

実売1万円未満クラス

AH-C551(デノン)

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製品特徴:振動板の前後の音圧バランスを調整することで最適な音響特性を実現するアコースティックオプティマイザー構造を採用。同時にアルミ削りだしハウジングやOFCケーブル、金メッキプラグなど随所に高品位パーツを活用することでさらなる高音質を追求している。ケーブル50センチのショートタイプ。これに80センチの延長コードが付属する。

音の特徴:デノンはオーバーヘッドタイプでも同じ傾向を持つのだが、ヘッドフォンらしからぬ自然なサウンドが特徴。まるでスピーカーの音を聴いているかのようなナチュラルさは、長時間聴いていても疲れることがない。その反動なのか音の木目がかなり粗く聞こえてしまうのが気になる。再生帯域も狭めだが、こちらはあくまで好みの範囲だ。

音色傾向
解像度感 粗い ○―――― きめ細かい
帯域バランス メリハリ重視 ―――○― フラット
低音特性 迫力重視 ――○―― ノビ重視
高音特性 迫力重視 ――○―― ノビ重視

Creative Aurvana In-Ear(クリエイティブメディア)

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製品特徴:1万円以下という実売価格ながらもバランスド・アーマチュアドライバーを搭載。さらに精密なチューニングを施すことによって自然さと迫力の両立したサウンドを実現したモデル。ケーブル分岐点に耳までのケーブル長さを調節できるスライダーを装備して衣服に擦れる騒音の発生を低減するなど、使い勝手の面でもさまざまな考慮が為されている。

音の特徴:ソリッドでエッジの効いた、それでいて耳障り感のないシャープなサウンド。デジタル楽器を多用している演奏や打ち込み系の曲などで、能力を十二分に発揮してくれる。低音のボリュームはそこそこだが、騒音のうるさい場所でもない限り充分。ヘッドフォン出力にそれなりのパワーを必要とするためiPod nanoには不向きなのが残念。

音色傾向
解像度感 粗い ――○―― きめ細かい
帯域バランス メリハリ重視 ――○―― フラット
低音特性 迫力重視 ――○―― ノビ重視
高音特性 迫力重視 ――○―― ノビ重視

SHE9700(フィリップス)

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製品特徴:実売3000円前後の低価格モデルながら、ハイコストパフォーマンスを誇るエントリーモデル。完全密閉式ではなく、セミオープン型というボディ形状を採用するため、完全なカナル式とはいえないものの、ダイナミックでボリューム感のある低音を実現している。ケーブル長は本体60センチ、延長60センチ。収納用キャリングケースが付属する。

音の特徴:解像度感は価格相応、音が粗いわりに元気の良さもいまひとつということで、今回紹介するのをやめようかとも思ったが、ボリュームをぐっと上げてみてビックリ。ハツラツとした、元気いっぱいのサウンドが再生された。確かにキメは粗いし、聴感上の再生帯域も広いとはいえない。しかしこのエネルギッシュさは捨てがたい。ハードロックを大ボリュームで楽しみたい人には、ひとつ持っていても損のない製品だ。

音色傾向
解像度感 粗い ○―――― きめ細かい
帯域バランス メリハリ重視 ―○――― フラット
低音特性 迫力重視 ○―――― ノビ重視
高音特性 迫力重視 ―○――― ノビ重視

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