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熟成された黒の表現――三菱「LVP-HC5500」特集:30万円で買えるフルHDプロジェクター(1/3 ページ)

» 2008年12月17日 17時50分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]

 このところ大幅な低価格化が進み、一段と購入しやすくなったフルHD対応プロジェクター。そのなかでも、低価格化を推し進める急先鋒(せんぽう)となったのが、三菱電機のHCシリーズである。同社の最新モデルであり、エントリークラスに位置する「LVP-HC5500」について、じっくり紹介していこう。

製品の特徴

photo 設置性の高さが光るコンパクトなボディーを採用する三菱電機の「LVP-HC5500」。ボディカラーはメタリック調のブラックで、レンズまわりだけブルーとなっている

 三菱電機は以前よりビジネス向け製品を手がけていたこともあって、プロジェクターに関しては定評あるメーカー。以前はDLP方式のパネルを採用していたが、HC5500の2世代前となる「LVP-HC5000」以降は、エプソン製の透過型液晶パネル“D6”C2FINEを採用。既存ラインアップ、とくにフルHDモデル比では半額前後の実売価格を実現することで、フルHDプロジェクターの普及を一気に加速させる存在となった。

 その後、毎年に近いペースでリニューアルしているHCシリーズだが、今年はエントリーのHC5500と、ボディーをリニューアルした新ミドルクラス「LVP-HC7000」の2モデルラインアップへと発展。しかしながら使用している液晶パネルは双方とも“D6”C2FINEのまま変わっていない。

 いまや最新の“D7”C2FINEに対して旧型のデバイスとなってしまったが、三菱電機では「あえて」それを使い続けているようだ。最新の“D7”C2FINEは明るいうえ黒の沈み込みもよく、倍速駆動にも対応しているなどメリットは多々ある。しかしHC5500では、最新パネルを付け焼き刃的に仕上げるより、特性を知り尽くしたパネルでさらなる映像のグレードアップすることを選択した。1/60秒単位で制御を行うオートアイリス(画面の明暗に合わせて投影する光量を自動制御する装置)やシリコンオプティクス製のビデオプロセッサー「Reon-VX」、ディープカラー対応のHDMI 1.3端子、14ビット処理のガンマ補正機能など、さまざまな最新技術を採用する。

photophoto レンズ位置を右側に寄せることでコンパクトなサイズを実現している。エントリーモデルとしては一般的な手法だ(左)。奥行きは30センチ強ととてもコンパクト。大きさから設置場所に迷うことはないだろう(右)

 なかでもReon-VXビデオプロセッサーの採用は、ユーザーに大きなメリットをもたらす。10ビット演算処理による高精度なI/P変換処理は、地上波デジタルやBSデジタルの映画放送なども(2-3プルダウンにより)ジャギーの少ない映像を実現。同時にDVDビデオの480p映像を1920×1080ピクセルにアップコンバート。1080/24p対応などとも相まって、映画やテレビ番組、Blu-ray Disc、DVDビデオなど、さまざまなコンテンツで質の高い映像を楽しめる。

photophoto 入力端子はボディ背面と、こちらも至ってオーソドックス(左)。ほとんど利用することはないが、いざというときには役に立つハードキーは、ボディの上面にすべてが集中している(右)

 明るさ、コントラスト比に関しては1000ルーメン/1万:1(オートアイリス)と、最新機種のなかにあってはいたって普通の数値ではあるが必要充分なスペック。上位機種のHC7000ではコントラスト比こそ7万:1(もちろんオートアイリス使用時)と大幅にグレードアップされているものの、絶対的な明るさに関してはHC5500の方が一枚上だ(HC7000は750ルーメン)。価格面だけでなく、明るさ的にもHC5500にメリットが与えられている。

 騒音レベルの低さも特徴。近年はファンのイズの小さいモデルがずいぶんと増えたが、HC5500はそのなかでもダントツだ。新構造の冷却ダクトとモーターの小型化により、19dBというスペックを誇る。これだけ静かだと、映画鑑賞の妨げにならないのでありがたい。

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