年末年始といえば初詣。
2008年公開映画「崖の上のポニョ」のモデルとして名前のあがった「鞆の浦」。瀬戸内の小さな古い港町である。「江戸時代なんてつい最近」と思えるほど古い。神功皇后の伝説があるくらい古い。明治大正は当たり前、江戸時代の建物も普通に残ってるし、路地も当時のままだし、平安・鎌倉時代からある神社仏閣が当たり前のように点在しているし、山も海もあって風光明媚だしで、歴史ある街並み好きにはたまらない場所だ。
そんな町で初詣した話。
1年前にも2年参りにもデジカメを持っていこう、という話をしたわけだが(今日から始めるデジカメ撮影術:第87回 初詣と深夜の関係)、あのとき撮影したのは東京の神社だった。なんだかんだいって東京は民家も街灯も多くて明るいし、参拝客も多い。それを実感させられた。
今回2年参りに行ったのは、鞆の浦の「沼名前神社」(ぬなくまじんじゃと呼ぶ)。ここはとにかく昔からある大きな神社である。
西暦193年ごろ(仲哀天皇2年)、仲哀天皇の皇后であった神功皇后が鞆の浦に立ち寄った際、海路の安全を祈ったのがはじまりだと伝えられているくらい古く、格式ある神社である。仲哀天皇は実在を疑う向きもあり、どこまで本当かは分からないけれども、少なくとも延喜式(平安時代中期に編纂されたもの)に記載されており、それだけでも十分古いのは確かだ。
大みそかの23時50分頃。雪が降る中、長い階段を上り、境内にたどり着く。神社の後ろは山なので真っ暗である。真っ暗な中に階段に沿って並べられた提灯だけがぼうっと光っている。最近は中に白熱電球が入っていることが多いけれども、ここはちゃんとロウソク。だから決して明るくはない、というか、都市圏の神社と比べるとものすごく暗い。東京の夜は、住宅街であってもなんだかんだいって結構明るいのだ。
これはとても懐かしい夜の暗さである。この暗さを撮りたいっ。
撮ってみた。真っ暗な中にぼうっと灯りがあるだけという条件では、露出が重要だ。都市部の夜景はイルミネーションが多くて意外に明るいのでちょっとマイナスの補正をかけてやればきれいに撮れるが、ここまで暗いとカメラ任せにするのは難しい。
これは「中央部重点測光」で撮影した。たいていのカメラは「評価測光」「分割測光」と呼ばれる方法で、要するに、構図全体を見てどのくらいの露出にするか決めている。「中央部重点測光」は文字通り、中央部にだけ着目してそこが適正な明るさになるように調整してくれる。
この場合は中央にある境内の灯りに合わせたわけだ。
で、手ブレしない程度のシャッタースピードになるよう、ISO感度を上げている。手ブレ補正付レンズで広角で撮る場合は1/8秒くらいかな。あまり遅くなると手ブレ補正付とはいえ補正しきれないくらいブレてしまう。1/8秒になるISO感度がISO1600だったのでそれで撮った。提灯の赤みがきれいに出るよう、ホワイトバランスは太陽光に固定である。
大事なのは、暗い場所でも灯りがあれば手持ちでもなんとかなるということ。最近のデジタル一眼レフでは手ブレ補正レンズが一般的だし、あるいは本体に手ブレ補正機構が入っていることも多いので、がんばればなんとかなる。
境内についたら雪がぱらついていた。
ぱらつく暗いの夜の雪を撮るのは難しいので、無理矢理フラッシュをたいてみた。フラッシュの光に雪が反射するので、ちょっと不自然になるけど、雪がよく見える。でも初詣っぽい風情や、神社の厳かさに欠ける。それは楽しくない。やはりフラッシュは使わず、スローシャッターでもやっとした夜の雰囲気を出したい。
いざというときのためにコートのポケットにミニ三脚を入れていたので、それにデジタル一眼レフをセットし、地面においてローアングルで撮ってみる。以下の3枚はD40Xで撮っている。
大きな神社なので人でごった返しているかと思ったが、そもそも人口が少ない場所だし、雪が降っていたしで、都市部と同じ感覚でいてはいけないのだ。
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