この春に登場した液晶テレビの新製品を眺めると、“エコ”をキーワードにしたものが急増していることに気づくだろう。事実、この1年ほどで液晶テレビの低消費電力化は急速に進んだ。そこで今回は、もっとも著しい進歩を遂げ、新生活需要にも適した32V型を例に挙げ、どのくらい省エネになったのかまとめてみよう。
昨年の前半まで、薄型テレビもほかの家電製品と同じように“新製品が出るたびに消費電力も少しずつ下がっていく”という状況だった。しかし、2008年の夏にソニーが省電力を全面に押し出した“BRAVIA”「KDL-32JE1」を投入。当時の32V型としては飛び抜けた、年間消費電力量86kWh/年を実現して省エネ競争の口火を切った。
2009年に入ると、まず1月にパナソニックが「TH-L32X1」で73kWh/年を実現。直後にソニーもJE1の技術をブラッシュアップした「KDL-32J5」を発表したが、年間消費電力量は76kWh/年と惜しくもパナソニックに届かなかった。ただし、ソニーとパナソニックの差は、電気代に換算すると1年間で69円(1kWh/年の電気代はおよそ23円)と、実用上は誤差といえるレベルだ。
2月に入ると、今度はシャープが「Dシリーズ」の新製品をリリース。昨年のソニー「KDL-32JE1」登場までトップを走っていた同社が、32V型「LC-32DE5」で年間消費電力量を66kWh/年にまで抑え、首位に返り咲いた。パナソニック「TH-L32X1」との差は、1年間で161円。このように、薄型テレビの省エネ競争は現在進行形で繰り広げられている。
こうした競争の結果、液晶テレビの消費電力はそれまでに比べて一気に引き下げられた。前述のシャープ製品で比較すると、2008年モデル「LC-32D30」が年間消費電力量で120kWh/年だったため、新Dシリーズの電力消費削減率は実に45%。参考までに、5年前の「LC-32GD1」(2004年製)は238kWh/年だった。つまり、同じメーカーの32V型液晶テレビでも、5年間で電気代が3分の1以下になった。
ちなみにブラウン管テレビと比較すると、その差はより顕著になる。ちょうど10年前(1999年)に発売されたソニーのFDトリニトロンカラーテレビ「KV-32DRX9」は、年間消費電力量で313kWh/年。新製品のKDL-32J5を4台同時に使ってもブラウン管1台より電気代が安い。
メーカー | ソニー | パナソニック | シャープ |
---|---|---|---|
製品名 | KDL-32J5 | TH-L32X1 | LC-32DE5 |
パネル解像度 | 1366×768ピクセル | 1366×768ピクセル | 1366×768ピクセル |
HDMI端子 | 2 | 3 | 3 |
消費電力 | 84ワット | 83ワット | 約60ワット |
年間消費電力量 | 76kWh/年 | 73kWh/年 | 66kWh/年 |
外形寸法(幅、高さ、奥行き) | 807×508×94ミリ | 777×541×217ミリ | 792×604×241ミリ |
重量 | 15.5キログラム | 約11.5キログラム | 約13.5キログラム |
本体カラー | セラミックホワイト、サファイアブルー、アンバーブラウン、クリスタルブラック | ディープブラック、ボルドーレッド、マホガニーブラウン、スノーホワイト | ブラック系、ホワイト系、レッド系 |
備考 | ブラビアエンジン2搭載、ブラビアリンク対応 | 「アクトビラ・ビデオ・フル」対応、ビエラリンク対応 | AQUOSファミリンク対応 |
では、なぜ急に液晶テレビの省エネ技術が進歩したのだろう。
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