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HDMI 1.4が示した“業界の方向性”(1/2 ページ)

» 2009年05月29日 03時46分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 HDMI Licensingは5月28日、新しいHDMI規格“1.4”の概要を公表した(→次世代インタフェース「HDMI 1.4」登場)。都内のホテルで行われた説明会では、HDMIケーブルでデータ通信を可能にする「HEC」(HDMI Ethernet Channel)をはじめ、3Dへの対応、新型コネクターなどについて、それぞれ開発の中心となったメーカー担当者が説明。展示とデモンストレーションを交えてHDMIの新しい機能と用途をアピールした。

photo HDMI LLCの代表を務めるSilicon ImageのSteve Venuti氏

 ただし、今回の発表は細かい仕様について未公表の部分もあり、あくまでも「概要のプレビュー」という位置づけ。HDMI LLCのSteve Venuti代表は、「スペック自体は正式に承認されたわけではない。最終的な仕様は、遅くても6月30日までに(HDMI LLCのサイトから仕様書を)ダウンロードできるようになる」と話している。

 またHDMI 1.4の対応製品が市場に出る時期については、「メーカーごとの判断による」と前置きした上で、「前回(HDMI 1.3)は2006年の6月に策定され、半年後には製品が発売された。今回も同じようなイメージではないか」と話していた。

イーサネットチャンネル

 HDMI 1.4の目玉の1つであるHEC(HDMI Ethernet Channel)は、HDMIケーブル1本で従来の映像、音声に加えてイーサネットと同様の通信を行うというもの。HECは、「HDMIコネクターのリザーブピン(使用していなかった接点)を利用して実装されるため、映像や音声からは独立した伝送路を持つ。転送速度は100Mbps以上を確保できる」(Silicon Imageのマーケティング担当ディレクター、Waheed Rasheed氏)。このためコネクターの形状に変化はなく、HDMIケーブルは下位互換性が保たれる(ただし、HECを利用するには対応ケーブルが必要)。

 HECは配線をシンプルにしてくれる。例えばテレビにイーサネットケーブルを接続し、レコーダーやSTBなどをHDMIでつなげると、インターネット接続を共有できる。これらのデバイスにイーサネットケーブルを接続する必要がない。また、「HDMI 1.4で接続した機器間では、コンテンツ配布やHDMIケーブルを介した録画なども可能になる」(同氏)。どのような形で製品に実装されるのかはまだ見えないが、例えばテレビで視聴中の番組をレコーダーで録画したり、使っていないテレビのチューナーを利用してレコーダーで同時録画を行ったりといった用途が想定されている。

photophoto インターネット接続を共有

 さらにSilicon Imageが提案する家電向けプロトコルスタック「LiquidHD」では、それぞれの機器のコンテンツにくわえ、その機能やGUIまでネットワーク越しにシェアできる。例えば寝室のテレビからリビングルームにあるCATVセットトップボックスを操作して、CATVの専門チャンネルを見るといったことも可能になる(→HDMIでテレビがネットにつながると? シリコンイメージの「LiquidHD」をひもとく)。

オーディオリターンチャンネル

 現在のHDMIは、BDプレーヤーなどのソース機器からテレビに対して、映像と音声を一方通行で転送している。しかし、新しく設けられたARC(Audio Return Channel)は、オーディオ信号に限って逆方向の通信を可能にする仕組みだ。これは、テレビとAVアンプ(ラックシアターなどのオーディオ機器を含む)を接続する際、テレビ内蔵チューナーから出力される音声を伝送するためのもので、現在のようにテレビとAVアンプを光デジタルケーブルなどで接続する必要はなくなる。

photophoto オーディオリターンチャンネルにより、テレビとAVアンプを光デジタルケーブルなどで接続する必要はなくなる

 また、ソース機器からテレビに対し、コンテンツタイプをリアルタイムにシグナル伝送する機能も追加された。例えば、最近のゲーム機のようにゲームのほかに動画や静止画なども送出できるタイプの機器が、テレビに対して「ゲーム画面」を送り出していると伝える。するとテレビは、その情報をもとに映像設定を「ゲーム」に自動調整。「ユーザーがメニューに触る必要はない」。

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