2011年のアナログ停波が近づき、エコポイントの後押しもあって、不況、不況といわれながら薄型テレビがよく売れている。ハイビジョン番組録画というニーズも当然高まり、Blu-ray Discレコーダーの売り上げも順調のようだが、いまひとつ盛り上がりに欠けるように見えるのが、迫力のある5.1チャンネルサウンドを生み出すAVアンプの市場だ。
狭ベゼル化と超薄化が進む大型テレビの音質が、いっこうに向上の兆しを見せないのは周知の事実。内蔵スピーカーの条件がますます厳しくなっているわけで、確かに致し方ない面もある。それゆえ大型テレビの購入に合わせて、スピーカーを組み込んだシアターラックを購入する方も多いようだ。しかし、実際にそのシアターラックの音質やサラウンド効果をチェックしてみると、一部を除いてひどいシロモノが多いのもまた事実。
5万円を切る価格で、ドルビーTrue HDやDTS HDマスターオーディオといったロスレス圧縮の高音質HDオーディオに対応したAVアンプ(例えばヤマハAX-V465)が登場、これに低価格の5.1チャンネルスピーカー・システムと組み合わせて映画のBD ROMを観れば、シアターラックとさほど違わない投資で、それをはるかに上回る、臨場感あふれる高音質が得られるのは間違いない。
しかし、大型テレビが置かれた家族が集うリビングルームに、スピーカーを5本も6本も置くなんてとても無理とお考えになる方が多いのもまた事実だろう。AVアンプの売り上げ不振の最大の原因はそこにあるとも思えるが、最近では大型フラットテレビと視覚的なマッチングのよいスリムなフロアスタンディング・タイプのスピーカーも増えている。それにリアに小型スピーカーを2本加えた4.0チャンネル再生でも臨場感豊かなサラウンド再生が存分に楽しめる。置き場所に頭を悩ませるセンタースピーカーとサブウーファーを省いても全然かまわないのである。
リア用スピーカーの壁掛け用金具はメーカーで用意されているケースは多いし、DIYショップに出かければ配線を隠せるモールが各種用意されているのを発見できる。リビングルームですっきりとしたサラウンド再生環境をつくりだすことはそれほど難しいことではないのだ。ちょっとした一手間を惜しまなければ、である。テレビ内蔵スピーカーでもシアターラックでもなく、まずはAVアンプと4本のスピーカーでサラウンド。そういう環境を準備して、初めてBlu-ray Discの映画や音楽ソフトから真の感動を引き出せると筆者は考えるのだが……。
さて、そんな状況下、この秋も各社からAVアンプの新製品が続々と登場している。一通りそれらをチェックしてみたが、音質・機能・価格対満足度の高さで驚かされた製品がある。それがオンキヨーの「TX-NA807」だ。
15万円をちょっと超える価格で145ワット(6オーム)の7チャンネル・アンプを内蔵したこの製品、最新AVアンプに求められる条件をほぼ完璧に満たしたと思える力作だ。HDMI入力は6系統。対応製品が今後ますます増えることが予想されるだけに、この入力数の多さがまずうれしい。
AVアンプのセットアップと各種調整が難しいのは確かだが、本機には自動セットアップ&音場補正機能が用意されており、付属のマイクを挿して、メニュー画面に従って操作していけば、たちどころにセットアップと音場補正が完了する。マニュアル調整に自信がないという方でも安心して使うことができると断言できる。まずはスピーカーのプラスとマイナスを間違えないでつなぐことに注意したい。
BD ROMに収録されるロスレス圧縮のHDオーディオのフルデコードに対応しているのはもちろんのこと、新しいサラウンド再生フォーマットであるドルビープロロジックIIz(以下PL IIz)とオーディシーDSXに対応している点にも注目したい。これはフロントスピーカーの後ろ上方(PL IIz)、またはフロントスピーカーのそ外側(オーディシーDSX)にもう一組のスピーカーを加えて、音場のつながりを向上させる再生メソッドだ(最大チャンネル数は7.1チャンネル)。
ステレオスピーカーに2本のサラウンドスピーカーを加えた4.0チャンネルでも臨場感豊かなサラウンドサウンドが楽しめると書いておきながら、こういうことを書くのもナンだが、実際に実験してみると、確かにこの2つの再生メソッドの効果はひじょうに大きいことが分かる。音が視聴空間をみっちりと埋めつくす、映画館的なリアルな音場が構築できるのである。
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