パナソニック、ソニー、シャープに続き、3D対応テレビを発表した東芝。CELL Boradbandプロセッサ搭載の“CELL REGZA”「55X2」を筆頭に、LEDエッジライトでスリム化を果たした「XE2」シリーズ、Zシリーズの3D対応版「ZG1」シリーズ、薄型スタイリッシュモデルの「F1」シリーズと豊富なラインアップをそろえた。今回は、東芝の3Dテレビ戦略について、注目の「55X2」を中心にAV評論家の麻倉怜士氏に詳しく解説してもらった。
――東芝は、CELLの処理能力を生かした3D超解像処理や2D-3D変換機能など、期待されていた機能を盛り込んできました
麻倉氏: 東芝については、以前にこの連載でも「2D-3D変換や超解像処理を3Dテレビに」と予測していましたが、見事に当たりましたね。
東芝は、これまで画質一筋でやってきた経緯もあり、どちらかというと3Dテレビに対しては斜に構えているイメージでした。しかし、去年の「CEATEC JAPAN 2009」でCELL REGZAを発表した際には、2Dのコンテンツを3Dに変換する技術デモンストレーションを披露して注目を集めました。
東芝の3Dに対する意識は他社と少し異なり、独自の超解像技術や2D-3D変換技術を用いて3Dコンテンツの画質向上に取り組んでいます。ここまで3Dコンテンツの“画質改善”にこだわったメーカーはほかにありません。実際、120Hzのフィールドシーケンシャルという手法はどこのメーカーも同じですから、現状ではあまり差が出てきません。ならば、「東芝は東芝にしかできない部分に注力しよう」という考えですね。
まず超解像技術ですが、主にスカパー!HDやBS11などで放送しているハーフHDの3Dコンテンツにフォーカスしたものです。これらの3D放送はサイド・バイ・サイド方式のため、水平方向の解像度が半分しかありません。それを全画面表示すると、どうしても画面にボケ感が出てしまいますが、それを超解像技術でくっきりと表示してくれる。現状において、超解像技術が生きる、もっともふさわしい使い方といえるでしょう。
DVDはともかく、Blu-ray Discのようにもともとキレイなコンテンツに超解像技術を使う必要はあまりありません。用途として何がふさわしいのか、これまではなかなか見いだせなかったのですが、パナソニックのデジタルビデオカメラが採用した超解像デジタルズームと並び、東芝のハーフHD 3Dコンテンツ対策は、とてもタイムリーかつ有効な使い方だと思います。その効果は、輪郭を強調するのではなく、精細感を増す方向でした。これは正しい方向性だと思いますし、今後にも期待できるでしょう。
一方の2D-3D変換も面白いことになっています。3Dビデオカメラによる撮影では、被写体に近づきすぎたり、離れすぎたりすると途端に苦しくなります。このため、2Dで撮影して3Dに変換するという手法も増えてきました。例えば、河村ゆきえさんの3D対応Blu-ray Disc(サイド・バイ・サイド収録)は、接近するシーンは2D-3D変換で処理したそうです。映画でも「アリス・イン・ワンダーランド」や「海猿」が2D-3D変換ですから、変換とはいっても十分に完成度が高いことは分かるでしょう。
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