麻倉氏: CELL REGZAの場合、物体の動きに伴う情報から、色の類似関係、顔を認識するなど独自のアルゴリズム使って疑似3D化します。お城やパレードの映像を見ましたが、なかなか自然な立体感を得ることができました。これはデモンストレーション用の映像でしたが、CELLの性能など考えると十分に期待が持てます。コンテンツ不足に対しても有効な回答になると思います。


2D-3D変換機能の概要。「手前の物体ほど見かけの動きが速い」という基本原理を利用して物体の前後関係(奥行き)を復元する「モーション3D」、映像の色ヒストグラムをあらかじめ用意した約1400枚のサンプルと比較して構図を推定する「ベースライン3D」、独自の顔検出技術によって入力映像内の人物を割り出し、奥行きデータを割り当てる「フェイス3D」が含まれる――55X2の画質についても聞かせてください
麻倉氏: まず2D映像については、コントラストが非常によくなってました。従来のCELL REGZAは白の明るさを強調していましたが、今回は黒の深みが出てきた印象です。LEDバックライトのローカルディミングをうまく調整したのではないでしょうか。
一方の3Dに関しては、画面が明るく、精細感も高くて良いと思います。ただし、クロストークに関してはまだですね。明るくするとクロストークが目立ち、クロストークを目立たなくすると暗くなるという“明るさとクロストークの問題”は、まだ完全な解決法が見つからないようです。
――東芝は裸眼立体視3Dテレビの研究も進めています
麻倉氏: 東芝研究開発センターではNHKも提唱しているインテグラル方式の裸眼立体視も研究しています。今はメインがメガネ付きのテレビですが、実は3Dの世界はもっと広くて、それには裸眼立体視も含まれます。もちろん、大きなテレビという枠で理想(裸眼立体視)を実現するのはまだ先の話ですが、今の技術開発をしっかりやらないと将来の裸眼立体視テレビも出てきません。東芝は、先をしっかりと見ているな、と感じました。

東芝は以前からインテグラル方式の裸眼立体視ディスプレイを研究している。写真左は2005年に公開した平置き型の試作機、右は今年4月に東芝モバイルディスプレイが発表した「21型裸眼式高精細立体表示ディスプレイ」だ。前者は16視差、後者は9視差となっている。なお、現在開発を進めている裸眼立体視対応の小型テレビも一次元インテグラル方式を検討中。視差数などの詳細は明らかにされていないが、高度なアルゴリズムを用いた「多視差変換技術」を搭載し、内部処理で複数の視差を作り出すという。詳細はCEATEC JAPANで明らかになるはずだBlu-ray 3D規格の策定時には、パナソニックが推すアクティブシャッターメガネ方式とフィリップスが提唱した裸眼立体視の方式が対立した経緯があります。裸眼立体視にも一定の支持があったので、やはりメーカーにも裸眼立体視に対する憧れはあるのでしょう。現在、裸眼立体視のディスプレイは、ニューサイトジャパンなどが熱心に訴求していますが、今後もさまざまなアプローチが出てくると思います。東芝も10月の「CEATEC JAPAN 2010」では比較的小さなディスプレイで、裸眼3Dテレビを発表すると公言しています。楽しみですね。
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